国立感染症研究所

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兵庫県における咽頭結膜熱患者からのウイルス検出状況, 2007~2017年

(IASR Vol. 38 p.138-139: 2017年7月号)

咽頭結膜熱(PCF)は, 発熱, 咽頭炎, 結膜炎を主症状とする小児の急性アデノウイルス(Ad)感染症である。Adには51種類の血清型と52型以降の遺伝型があり, A~Gの7種に分類される。PCFの流行の多くは3型によるものであるが, 1型, 2型や, 52型以降の型も検出されている。兵庫県では, 病原体サーベイランスの一環として, 小児科定点医療機関で採取されたPCF患者のウイルス検査を実施している。今回, 過去10年(2007年1月~2017年4月)のPCF患者からのウイルス検出状況について報告する。

 2007年1月~2017年4月に小児科定点医療機関でPCF患者306名から採取された咽頭ぬぐい液302検体と結膜ぬぐい液4検体についてウイルス分離および遺伝子検出を行った。ウイルス分離はA549細胞, RD-18S細胞, VeroE6細胞を用いて行い, 同時に臨床検体から直接ウイルスDNA/RNAを抽出し, Ad, エンテロウイルスおよびライノウイルスの遺伝子検出を行った。269検体からAdが検出され, 8検体からエンテロウイルス, 4検体からライノウイルスが検出された。Ad陽性の269検体のうち33検体はエンテロウイルスまたはライノウイルスも検出され, 重複感染と考えられた。25名(8.2%)のPCF患者からはこれらのウイルスは検出されなかった()。

過去10年でAdは3型(139名), 2型(57名), 1型(38名), 4型(19名), 5型(10名)の順に多く検出され, 6型, 11型, 37型, 54型, 56型, 64型はそれぞれ1名から検出された。毎年, 複数の型が検出されているが, 2007年, 2008年, 2011年, 2015年は3型が, 2012年は2型が多く検出された。2016年以降兵庫県では1型と2型の検出が続いている。

4名の結膜ぬぐい液のうち, Adが検出されたのは1名のみで, 54型であった。37型, 54型, 56型, 64型はD種に属し, 流行性角結膜炎の原因となる。今回, 37型, 56型, 64型は咽頭ぬぐい液から検出されていることから, 今後PCFとの関連について検討する必要があると思われる。

県内では2017年はPCF患者数が例年より多く報告されており, 今後の患者数や検出ウイルスの動向について注視する必要がある。

 

兵庫県立健康生活科学研究所
 荻 美貴 高井伝仕 押部智宏 近平雅嗣
国立感染症研究所感染症疫学センター
 藤本嗣人

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