国立感染症研究所

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2013および2017年におけるコクサッキーウイルスA6型による手足口病患者の臨床的・疫学的観察

(IASR Vol. 38 p.198-199: 2017年10月号)

最近の手足口病の主な病原ウイルスはコクサッキーウイルスA16型(CV-A16), A6型(CV-A6), エンテロウイルスA71型(EV-A71)であり, その他CV-A10, CV-A9, CV-A4, コクサッキーウイルスB群およびエコーウイルスなどが検出されている。CV-A6は従来ヘルパンギーナの主要病原ウイルスであったが, 2008年に海外で1), 2009年以降は日本で手足口病の原因ウイルスとして全国的に検出され, 2011年には全国的大規模流行を起こした2,3)。その臨床像は一般的な手足口病と異なる手足口病であり, 2013および2017年に流行した際の臨床像を記述する。

対象と方法

静岡県藤枝市にある小林小児科を2013および2017年の手足口病流行時に受診し, 臨床的に手足口病と診断された患者の保護者より文書による同意取得の上, 咽頭ぬぐい液を採取した。検体の採取は国立病院機構三重病院の倫理審査で承認された。検体は-30℃で凍結保存の後, PCR検査でCV-A6を確定した。

結 果

当院を受診した手足口病の患者数は2013年235人, 2017年155人であり, このうちインフォームドコンセント(アセント)が得られ, CV-A6症例と確定したものはそれぞれ34人(2013年)および23人(2017年)であった。

1)2013年流行のCV-A6による手足口病の臨床症状(34例)

発熱は30/34(88.2%)で認め, 平均最高体温は38.9℃, 平均有熱期間は1.5日であり, ヘルパンギーナ様口内疹は21/34(61.8%)であった。皮疹が発熱より先行する例が4例(11.8%)みられ, 皮疹の分布は臀部から下肢により顕著に分布する傾向がみられた。続発症の爪甲脱落症は26/34(76.5%)に認められた。

2)2017年のCV-A6による手足口病の臨床症状(23例)

発熱は20/23(87.0%)で認め, 平均最高体温は38.9℃, 平均有熱期間は1.6日, ヘルパンギーナ様口内疹は15/ 23(65.2%)にみられた。頬粘膜の口内疹は3例(13.0%)にみられたのみであった。3例(13.0%)では発熱より皮疹が先行して出現した。皮疹は2013年同様, 臀部から下肢に顕著に認められたが, 皮疹の出現部位はより変化に富み, 体幹や頭皮に出現した例もあった。手掌, 足底の皮疹はそれぞれ10例(43.5%), 16例(69.6%)と, 従来の手足口病より低頻度であった。一方, 体幹の皮疹は5例(21.7%)に認められ, 臀部の皮疹が顕著の場合, 体幹に拡大してみられた(図A)。慢性湿疹やアトピー性皮膚炎がみられる場合に皮疹が集簇傾向を示した(図B)。

3)CV-A6による手足口病の家族内感染, 不顕性感染

2013年の34患者の世帯調査で, 総同居家族人数149人(成人89人, 小児60人)のうち, 家族内感染は成人9人(罹患率10.1%), 小児11人(患者以外の同胞数26人で罹患率42.3%)が発症し, 感染リスクは高いと思われた。また, 2011年流行時手足口病を発症しなかった患者家族の5人(小児4人, 成人1人)が爪甲脱落症を示し, そのうち2例でCV-A6中和抗体の高値を認め, 不顕性感染が示唆された。

 

参考文献
  1. Osterback R, et al., Emerg Infect Dis 15: 1485-1488, 2009
  2. Fujimoto T, et al., Emerg Infect Dis 18: 337-339, 2012
  3. Kobayashi M, et al., Jpn J Infect Dis 66: 260-261, 2013

 

小林小児科 小林正明
国立感染症研究所感染症疫学センター 花岡 希 小長谷昌未 藤本嗣人
国立病院機構三重病院臨床研究部 谷口清州

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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