国立感染症研究所 感染症疫学センター
2018年8月現在
(掲載日:2018年10月30日)
Chlamydia trachomatisは男性の尿道炎や女性の子宮頚管炎をおこす主な病原体の一つである。感染症発生動向調査では、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関が「症状や所見から性器クラミジア感染症が疑われ、定められた検査方法により診断した」場合に、同医療機関から性器クラミジア感染症として毎月報告される。定められた検査方法には、尿道や性器から採取した検体でのChlamydia trachomatisの検出又はChlamydia trachomatisの抗原か遺伝子の検出、又は血清での抗体検出が含まれる。なお、過去10年間で国内の性感染症定点数は1000弱でほぼ横ばいである(2007年968、2017年988)。
感染症発生動向調査では、性器クラミジア感染症はこの5年間(2012年以降)男女ともに定点当たり報告数はほぼ横ばいである(図1)。
図1.感染症発生動向調査における性器クラミジア感染症定点当たり報告数、2007-2017年 |
しかし、5歳毎の年齢階級別にみると、2017年に男性では20代前半、女性では20代の若年者で定点当たり報告数が増加してきている(図2、3)。この結果、2017年には男性では定点当たり報告数が最も多い年齢階級が、20代後半から20代前半に変わった。なお、女性では継続して20代前半が最も多いままである。また、性器クラミジア感染症は夏に多いという季節性があるが、2018年の上半期の報告数を2017年同期間の報告数と比べても、20代前半男女の定点当たり報告数は増加を認めている。
図2.女性における年齢階級別性器クラミジア感染症定点当たり報告数、2007-2017年 |
図3.男性における年齢階級別性器クラミジア感染症定点当たり報告数、2007-2017年 |
この若年男女での性器クラミジア感染症の報告数増加については、サーベイラインスの報告体制には大きな変化はないと考えられるが、臨床医の診断や検査ポリシーの変化(スクリーニング数増加、等)が報告数に影響を与えている可能性がある。一方で国内では若年人口が減少してきていることから2、罹患率はより増加している可能性もある。
若年男女での性器クラミジア感染症の動向の解釈には更なる検討が必要であるが、増加してきている可能性を深刻に捉え、コンドームの適切な使用を含む若年者への性教育の強化、医療機関への若年者間での性器クラミジア感染症増加の周知とパートナー健診の推進を進める事が重要である。
参考文献
- Infectious Diseases Weekly Report, https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2018.html(閲覧2018年8月11日)
- 厚生労働省人口動態調査 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html(閲覧2018年8月11日)