感染症発生動向調査及び積極的疫学調査により報告された新型コロナウイルス感染症確定症例112例の記述疫学(2020年2月24日現在)
2020年2月1日から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は感染症法第6条第8項の指定感染症に定められ、診断した医師は直ちに管轄の保健所に届け出ることが義務づけられた(感染症発生動向調査)。また、感染症法第15条に規定する積極的疫学調査を行うことが可能となった。
本稿では、感染症発生動向調査に届け出られた確定例に関する情報、及び厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部が積極的疫学調査として関係自治体等から毎日収集し、更新した情報(2月24日現在)をもとに記述する。これらの情報収集は現在も進行中であるため、今後、修正、もしくは更新がなされる可能性がある。また、一部は未届出の段階の、あるいは感染症発生動向調査としての届出作業が終了していない症例が少なくないことから、本データで紹介する患者数は、厚生労働省が公表しているそれとは現時点で異なっている。今後、徐々に乖離は解消されていくと思われるが、注意されたい。
2020年2月24日までに、感染症発生動向調査及び積極的疫学調査の両調査で報告がなされ、突合可能であった確定症例(PCR検査陽性)は112例であった(2月24日現在)。性別は男性69例、女性43例で、男女比は1.6:1で男性に多かった。年齢の中央値は66.5歳(範囲15-89)、その分布は10代2例(2%)、20代7例(6%)、30代8例(7%)、40代9例(8%)、50代20例(18%)、60代13例(12%)、70代33例(29%)、80代20例(18%)であり、60代以上で約6割を占めた。国籍は日本75例、米国11例、中国7例、オーストラリア7例、フィリピン4例、インド3例、カナダ3例、タイ1例、香港1例であった。推定感染地域及び経路として、船舶72例、中国/武漢関連11例、東京都11例、和歌山県11例、千葉県2例、神奈川県1例、大阪府1例、石川県1例、国内(都道府県不明)1例、国内・国外不明1例であった。
発症日の判明している90例の流行曲線を図に示す。症例は2020年1月20日から2月19日にかけて発症していた。船舶乗員・乗客の症例は2月7日に発症者のピークがあり、中国/武漢関連症例は1月の発症が多かった。その他の症例は散発していた。
届出時点の主な症状は、発熱81例/112例(72%)、咳69例/112例(62%)、肺炎43例/66例(65%)、咽頭痛23例/68例(34%)、全身倦怠感20例/61例(33%)、鼻汁・鼻閉17例/64例(27%)、頭痛17例/62例(27%)、下痢11例/64例(17%)、嘔気・嘔吐5例/60例(8%)、関節・筋肉痛4例/58例(7%)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)3例/41例(7%)、結膜充血0例/53例(0%)であった。なお、情報無し・不明であった場合、分母から除いて集計しているため、それぞれの症状で分母が異なる。
年齢群別の各症状の報告数を表に示す。なお、診断時、無症状病原体保有者として届け出られた症例は21例(19%)であり、うち実際には診断日以前あるいは同日の発症日を有する者の情報が5例、発症日不明で症状があった者の情報が4例、診断後に発症が確認された者が6例あった。2月24日現在、無症状症例は6例(5%)であった。医療的介入について、ICU入室8例/52例(15%)、侵襲的換気(気管挿管等)11例/50例(22%)であった。また、年齢群別の医療的介入の報告数を表に示した。その他の介入として体外式膜型人工肺(ECMO)使用が5例(40代1例、60代1例、70代2例、80代1例)であった。今回の分析対象となった112例において、死亡者はなかった(2月24日現在)。
重症例の基礎疾患の有無について、ICU入室例8例では、基礎疾患あり4例・なし1例・不明3例、侵襲的換気を必要とした11例では、基礎疾患あり5例・なし1例・不明5例、ECMOを必要とした5例では、基礎疾患あり3例・不明2例であった。
本稿のまとめは、日本におけるPCR検査陽性症例(厚生労働省2月25日報告:国内140例、チャーター便帰国者15例、クルーズ船691例)の一部である。COVID-19の日本における発生動向及び疾患の重症度の把握、対策への反映等を目的に引き続き情報収集と分析、情報の還元を実施予定である。
感染症発生動向調査及び積極的疫学調査にご協力いただいております各自治体関係者の皆様に心よりお礼申しあげます。