IASR-logo

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)病原体サーベイランス, 2017年

(IASR Vol. 39 p162-163: 2018年9月号)

感染症法5類全数把握対象疾患であるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)感染症は, 2017年3月に発出された通知(健感発0328第4号)により, 症例の届出があった際には医療機関に対し病原体の提出を求め, 地方衛生研究所等で試験検査を実施し, 結果を病原体検出情報システムに報告することとなっている。今回, 通知で原則実施とされている, PCR法による主要なカルバペネマーゼ遺伝子(IMP型, NDM型, KPC型, OXA-48型)の検出結果の概要を示す。

検体採取日が2017年1月1日~12月31日で, 発生動向調査の届出症例と考えられる865名由来の865株(2018年7月17日現在)を集計対象とした。これらのうち737株 (85%) は, 発生動向報告IDの記載があった。2017年の発生動向調査届出(患者報告)数は1,660例(第1週~第52週;2018年5月1日現在)であり, その約半数の分離菌株の試験検査結果が報告されていたと考えられた。865名の年齢中央値は75歳, 男性518例(60%)で, 報告地域の分布も含め患者報告とほぼ同様であった。

分離検体は, 尿(n=254, 29%), 血液・髄液(n=223, 26%), 呼吸器検体(n=149, 18%), 腹腔内検体(n=85, 10%), 皮膚・軟部組織検体(n=77, 9%), 穿刺液(腹水・胸水・関節液)(n=58, 7%)の順に多かった。菌種は, Enterobacter aerogenes(n=276, 32%), Enterobacter cloacae(n=255, 29%), Klebsiella pneumoniae(n=103, 12%), Escherichia coli(n=86, 10%), Serratia marcescens(n=42, 5%), Citrobacter freundii(n=30, 3%) の順に多く報告され, 分離検体および菌種の分布も患者報告とほぼ同様であった。

865株のうちいずれかのカルバペネマーゼ遺伝子が検出された株は239株(28%)で, 国内型カルバペネマーゼ遺伝子のIMP型が227株と大半を占めた。CREに占めるIMP型検出割合は菌種による差異を認め, E. aerogenes 0%, E. cloacae 29%, K. pneumoniae 58%, E. coli 52%であった。IMP型検出株の主な菌種は全国ではE. cloacae(n=74, 33%), K. pneumoniae(n=60, 26%), E. coli(n=45, 20%)の順に多かったが, 地域差を認め(), 近畿ではK. pneumoniae, 中国・四国はE. coliが最も多かった。さらに, IMP型が検出された227株のうち100株は, 塩基配列解析によるIMP遺伝子型別結果も報告された。原則実施の検査項目ではないため現時点で詳細な比較はできないものの, IMP-1(n=44)はすべての地域から報告されたのに対し, IMP-6(n=56)は東海・北陸, 近畿, 中国・四国からのみ報告があった。

海外型カルバペネマーゼ遺伝子とされるNDM型, KPC型, OXA-48型は13株より検出された。菌種はE. coliが5株(すべてNDM型)とK. pneumoniaeが8株(NDM型3株, KPC型3株, OXA-48型2株)であった。13株のうち海外渡航歴のあった症例由来は5株で(渡航先, 東南アジアと南アジア), 海外渡航歴のない症例由来が8株であった。

今後も, 全国的かつ継続的なCRE病原体サーベイランスにより, カルバペネマーゼ遺伝子の地域別保有状況および海外型カルバペネマーゼ遺伝子保有株の分離状況を把握していくことが必要と思われる。

 

国立感染症研究所薬剤耐性研究センター
国立感染症研究所感染症疫学センター
全国地方衛生研究所

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan