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2012年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第18週までは30例以下の報告が続き、第19週から増加し始めた。第22週以降に大阪府で保育所の給食を原因とした食中毒(O26 VT1)が発生した影響で、第23週に154例と一時的なピークを形成したが、その後第24~27週までは各々113、107、112、110例と横ばいで、第28週は94例であっ(図1)。本年第28週までの累積報告数1,129例は、2000年以降の各年の同週までの累積報告数と比較して2003年に次いで2番目に少ない報告数である(2000年1,209例、2001年1,641例、2002年1,260例、2003年846例、2004年1,187例、2005年1,256例、2006年1,177例、2007年1,445例、2008年1,288例、2009年1,184例、2010年1,485例、2011年1,452例)。また、患者(有症状者)に絞った累積報告数は、2007年以降*で比較すると704例で最も少なく(図2)(2007年966例、2008年878例、2009年769例、2010年933例、2011年983例)、2000年以降で比較しても2003年(501例)に次いで2番目に少ない。
第1~28週の累積報告数1,129例について都道府県別にみると、大阪府(171例)が最も多く、次いで福岡県(84例)、東京都(76例)、愛知県(65例)、神奈川県(60例)の順となっている〔速報グラフ(PDF)2012年第28週「都道府県別腸管出血性大腸菌感染症累積報告状況」参照:http://www.niid.go.jp/niid/ja/ehec-doko.html〕。 性別では男性544例、女性585例、年齢群別では0~9歳367例、10~19歳167例、20~29歳159例の順に多かった。 第23週以降に起きた集団発生として、第24週以降に鹿児島県の保育所で発生した集団感染(O111 VT1・VT2)では、職員や園児から家族への二次感染等を含めこれまでに計30例の感染者が報告されている。また、第25週に佐賀県の高校生の間で集団感染(O不明VT1)により7例の感染者が報告され、後に感染研で血清型別が行われた結果、O186:H-であると判明した(O186は昨年新しく追加されたO血清群)。さらに、第26週には山口県の福祉施設で集団感染(O157 VT1・VT2)が発生した。 第25週以降、全国的には報告数が横ばいである一方で、福岡県からの報告が第25~28週にかけて、各々1、9、16、11例と増加傾向にある〔速報グラフ(PDF)2012年第28週「都道府県別腸管出血性大腸菌感染症週別報告状況」参照〕。原因菌の血清群は多くがO157であるが、VT1・VT2ならびにVT2単独のいずれの型も分離されている。県内の広域にわたって感染者が報告されており、現時点で感染原因・感染経路等を含めて関連性は不明である。 腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第28週までに累計23例(男性12例、女性11例)報告されており、年齢群別では0~4歳14例、5~9歳4例、15~64歳1例、65歳以上4例であった。死亡例は2例(70代男性と80代女性、いずれもO157 VT2の感染)報告されている。 毎年本症が数多く発生する夏季に入り、その発生動向には引き続き注意が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。特に、保育施設における集団発生が多くみられており、日ごろからの注意として、オムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要である。また、簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。さらに、過去には動物とのふれあい体験での感染と推定される事例も報告されており、動物との接触後の充分な手洗いにも注意が必要である。 * 菌分離されていなくても、便からのVT検出あるいは血清でのO抗原凝集反応体又は抗ベロ毒素抗体の検出によって診断した場合に届出することとなった。 (補)菌の検出状況については、(グラフ)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1524-iasrgb.html、(集計表)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/ |