注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症 (2012年6月13日現在)
2012年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第18週までは30例以下の報告が続き、第19週から増加し始めた。第21週37例、第22週88例と50例を超え、第23週は144例であった(図)。本年第23週までの累積報告数582例は、2000年以降の各年の同週までの累積報告数と比較して2003、2000年に次いで3番目に少ない報告数である(2000年565例、2001年1,043例、2002年656例、2003年465例、2004年602例、2005年600例、2006年595例、2007年767例、2008年653例、2009年655例、2010年824例、2011年907例)。
|
|
|
図. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(2000~2012年第23週) |
|
|
第1~23週の累積報告数582例について都道府県別にみると、大阪府(136例)が最も多く、次いで愛知県(48例)、福岡県(44例)、東京都(36例)、熊本県(35例)の順となっている(感染症発生動向調査2012年速報グラフ(PDF)照;http://www.niid.go.jp/niid/ja/ehec-doko.html)。
性別では男性269例、女性313例、年齢群別では0~9歳210例、20~29歳91例、30~39歳70例の順に多かった。
集団発生として、第21週以降に佐賀県の障害福祉施設で発生した集団感染(O103 VT1)では、家族内感染等を含めこれまでに計10例の感染者が報告されている。また、第22週以降に大阪府で保育所の給食を原因とした食中毒(O26 VT1)が発生し、園児や保育士ならびにそれらの接触者である家族等を含め、これまでに100例以上の感染者が報告されている。さらに、第23週には千葉県の保育所で集団感染(O157 VT1・VT2)が、神奈川県の焼肉店で食中毒(O157 VT1・VT2)が発生した。
腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第23週までに累計14例(男性8例、女性6例)報告されており、年齢群別では0~4歳9例、5~9歳1例、65歳以上4例であった。死亡例は2例(70代男性と80代女性、いずれもO157 VT2の感染)報告されている。
今後、毎年本症が数多く発生する夏季を迎えるにあたり、その発生動向には注意が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。
(補)菌の検出状況については、(グラフ)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1524-iasrgb.html、(集計表)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/1525-iasrb.html をご参照ください。
|