注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症 (2012年8月15日現在)
2012年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第18週までは30例以下の報告が続き、第19週から増加し始めた。第22週以降に大阪府で保育所の給食を原因とした食中毒(O26 VT1)が発生した影響で、第23週に156例と一時的なピークを形成した。その後第24~29週までは横ばいで、第30週から再び増加し始め、第30週124例、第31週153例で、第32週は246例であった(図1)。本年第32週までの累積報告数1,782例は、2000年以降の各年の同週までの累積報告数と比較して2003年、2000年に次いで3番目に少ない報告数である(2000年1,740例、2001年2,779例、2002年1,924例、2003年1,300例、2004年1,976例、2005年1,872例、2006年1,894例、2007年2,169例、2008年2,116例、2009年1,857例、2010年2,173例、2011年2,411例)。また、患者(有症状者)に絞った累積報告数は、2007年以降*で比較すると1,072例で最も少なく(図2)(2007年1,460例、2008年1,432例、20091,227例、2010年1,418例、2011年1,675例)、2000年以降で比較しても2003年(757例)に次いで2番目に少ない。
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(2000~2012年第32週) |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症患者(有症状者)の年別・週別累積報告数の推移(2007~2012年第32週) |
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第1~32週の累積報告数1,782例について都道府県別にみると、大阪府(193例)が最も多く、次いで福岡県(130例)、岡山県(119例)、東京都(111例)、愛知県(99例)、鹿児島県(85例)、北海道(83例)の順となっている〔速報グラフ(PDF)2012年第32週「都道府県別腸管出血性大腸菌感染症累積報告状況」参照:http://www.niid.go.jp/niid/ja/ehec-doko.html〕。
性別では男性848例、女性934例、年齢群別では0~9歳628例(うち5歳未満438例)、10~19歳250例、20~29歳245例の順に多かった。
第29週以降に起きた集団発生として、特に保育施設における集団感染が目立っており、第29週に宮崎県(O26 VT1)と鹿児島県(O111 VT1)で、第31週に岐阜県(O111 VT1)、岡山県(O26 VT1)、佐賀県(O26 VT1)で、第32週に長野県(O26 VT1)と宮崎県(O111 VT1・VT2)でそれぞれ報告されている。
また、食中毒として第29週に福岡県で仕出し弁当による食中毒(O157 VT1・VT2)が発生した。第32週には北海道で白菜の浅漬けを原因とした食中毒(O157 VT1・VT2)が発生し、高齢者関連施設内での集団発生を含め、道内の広域にわたり感染者が報告されており、そのうち2例の死亡が報告されている。
腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第32週までに累計38例(男性19例、女性19例)報告されており、年齢群別では0~4歳19例、5~9歳8例、10~14歳1例、15~64歳4例、65歳以上6例であった。死亡例は4例(4歳女性1例、70代男性1例、80代女性2例)報告されており、すべてO157(VT1・VT2 2例、VT2のみ2例)の感染であった。
例年の状況から、発生のピーク時期と考えられ、引き続き予防対策の徹底が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。特に、保育施設における集団発生が多くみられており、日ごろからの注意として、オムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要である。また、簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。さらに、過去には動物とのふれあい体験での感染と推定される事例も報告されており、動物との接触後の充分な手洗いにも注意が必要である。
* 腸管出血性大腸菌感染症の届出基準は、2006年4月よりHUS発症例に限って、菌分離されていなくても、便からのVT検出あるいは血清でのO抗原凝集抗体又は抗ベロ毒素抗体の検出によって診断した場合に届出することとなった。
(補)菌の検出状況については、(グラフ)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1524-iasrgb.html、(集計表)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/1525-iasrb.html をご参照ください。
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