国立感染症研究所

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平成27年度ポリオ環境水サーベイランス(感染症流行予測調査事業および調査研究)にて検出されたエンテロウイルスについて

(IASR Vol. 37 p.208-209: 2016年10月号)

経口生ポリオワクチン(OPV)に代わる定期接種用ワクチンとして, わが国では2012(平成24)年9月より不活化ポリオワクチン(IPV)を導入した。そして2013(平成25)年度より, 輸入が想定されるポリオウイルスを効率よく監視する環境水サーベイランスを感染症流行予測調査事業感染源調査および各地方衛生研究所(地衛研)による調査研究として開始することとなった。

IPV切り替え後, この環境水サーベイランスにおいて2014(平成26)年10月に3型ポリオワクチン株が検出された。さらに異なる別の地域にて同年11月に感染症発生動向調査による感染性胃腸炎患者より1型ワクチン株が検出されている。前者はその後の追加調査で検出されなかったことより一過性の検出と考えられ1), 後者は海外にてOPVワクチン接種直後であることが判明し, 紛れ込み例と考えられた2)

2015(平成27)年度は事業開始から3年目である。前述の事業による環境水ウイルスサーベイランスはポリオウイルス検出を目的としているが, ①ポリオウイルス以外に分離/検出されるウイルスの動向, ②事業対象期間外(事業は通知発出後6カ月を想定)の調査, に関しては各地衛研独自の調査研究である。今般, 調査期間中に検出されたエンテロウイルスの動向について取りまとめを行ったので概要を報告する。なお, アデノウイルス他の腸管系ウイルスについても調査が実施されているが, 検査対象は各地衛研ごとに異なるため本報告には含めていない。

方 法

本調査では2015年1月~2016年3月の間, 月1回の頻度で流入下水を採取した。調査期間は各地衛研で異なっており, 調査結果とともに次ぺージ表に示している。なお事業として16カ所, 調査研究として2カ所, 計18カ所の地衛研の協力を得ており, 調査対象地域の下水道利用人口は合計約600万人である。平成27年度感染症流行予測調査事業実施要領3)に基づき, 平成25年度IASR報告2)と同様, 流入下水を陰電荷膜法にて濃縮(50~100倍)し, ウイルス分離・同定を行った。

結果と考察

平成26年度は10月に一過性と考えられる3型ワクチン株が流入下水より検出されたが2), 平成27年度の調査期間においては, ポリオウイルスの検出はなかった。

平成27年度の調査でも, 昨年同様, 環境水からは主にエンテロウイルスB(EV-B)群に属するウイルスが検出されており, に結果を示した。EV-A群に属するウイルスはコクサッキーウイルスA16(CA16)が3カ所における検出のみである。比較的多く検出されたウイルスの内訳はコクサッキーB5(CB5)が18地域のうち15カ所, エコーウイルス11(E11)が13カ所で検出され, 平成26年度と同様に広域流行していた可能性を示唆している。またE3は12カ所, E25は10カ所検出され, 平成26年度より検出箇所の増加傾向が認められた。なお2カ月以上検出された血清型は地域内流行の可能性があると考えられ, では灰色で示した。

平成27年度調査においてE19, E20, E33は, 感染症発生動向調査では報告されず, 環境水ウイルスサーベイランスでのみ検出された。興味深いことにE19は平成26年度1)と平成27年度では, 異なる地域で検出されていた。これらの結果は環境水サーベイランスが顕性,不顕性にかかわらずウイルスを検出できることを意味し, 本法の有用性を示す。しかし, 本調査の対象人口が調査した下水道利用地域に限定されていることに対し, 感染症発生動向調査は地域全体を対象としていることに留意しなければならない。両方を組み合わせ質の高いポリオウイルスの監視を継続する必要がある。

謝辞:調査にあたり関係自治体, 保健所, 下水処理場より多大なるご協力をいただいている。厚くお礼申し上げる。本報告の一部はAMED補助金感染症実用化研究事業による支援を受けた。

 

参考文献
  1. IASR 37: 27-29, 2016
  2. ポリオウイルスに関するサーベイランス等について(依頼)」平成27年4月15日健感発0415第3号
  3. 平成27年度感染症流行予測調査事業実施要領
    http://www.niid.go.jp/niid/images/epi/yosoku/AnnReport/2015-99.pdf

板持雅恵, 滝澤剛則(富山県衛研), 伊東愛梨, 三浦美穂(宮崎県衛環研), 伊藤 雅(愛知県衛研), 小澤広規(横浜市衛研), 北川和寛(福島県衛研), 葛口 剛(岐阜県保環研), 後藤明子(北海道衛研), 島 あかり(佐賀県衛薬セ), 下野尚悦(和歌山県環衛研セ), 高橋雅輝(岩手県環保研セ), 筒井理華(青森県環保セ), 中田恵子(大阪府公衛研), 中野 守(奈良県保研セ), 西澤佳奈子(長野県環保研), 濱﨑光宏, 吉富秀亮(福岡県保環研), 堀田千恵美(千葉県衛研), 松岡保博(岡山県環保セ), 三好龍也(堺市衛研), 吉田 弘(感染研)

追記:2016(平成28)年度ポリオ環境水サーベイランスは協力いただく自治体に一部変更があったが計18カ所にて開始している。このうち同年7月, 1カ所にて3型ポリオウイルスが検出された。分離株は実施要領に基づき感染研にて行政検査を実施し, ワクチン株であることを確認している。

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