2011/12シーズンに仙台市内で分離されたAH3亜型インフルエンザウイルス
2011/12シーズンは、発生動向調査病原体定点のインフルエンザ患者咽頭ぬぐい液44検体中28検体からAH3亜型が、7検体からB型が分離されている(2012年3月2現在)。
分離株について国立感染症研究所より配布された2011/12シーズンインフルエンザウイルス同定キットにてAH3亜型インフルエンザウイルス25株の赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した結果、HI価は抗A/Victoria/210/2009(ホモ価1,280)に対し320~1,280のHI価を示し、横浜市1) 、三重県2) 、佐賀県3) 、愛知県4) が報告しているHI価が低下した株は分離されていない。また、B型インフルエンザウイルス7株中6株のHI価は抗B/Brisbane/60/2008(ホモ価2,560)に対し320~2,560、抗B/Bangladesh/333/2007(ホモ価640)に対し20のHI価を示したことから、Victoria系統の株であると判定され、残りB型1株のHI価は抗B/Bangladesh/333/2007に対し640、抗B/Brisbane/60/2008に対し20のHI価を示したことから、山形系統の株であると判定された。
2011年11月~2012年1月までに分離したAH3亜型インフルエンザウイルス10株について、HA遺伝子の系統樹解析を行ったところ、1株を除いてほぼ同一の遺伝子配列を有していることがわかった〔図1、図に示した赤丸5株の他に、A/仙台(Sendai)/24/2011と配列が同じ株が2株、A/仙台(Sendai)/1/2012と配列が同じ株が3株〕。解析した10株はすべてT212Aを共通に持つVictoria/208クレード内に位置しており、さらに、A198S、V223I、N312Sのアミノ酸置換を共通にもつサブクレード内に位置していた。このうち1株は他地方衛生研究所の報告にみられるQ33R、S45N、T48I、N278Kの置換を持っていた。一方、他の9株にはこれらのアミノ酸置換は認められず、N145Sのアミノ酸置換を持っていたことから、佐賀県5) が報告したA198S、V223I、N312S、N145Sを有するサブクレード(2)の株と近縁であると考えられた。
これまでの各地の報告では、2011/12シーズンのAH3亜型インフルエンザウイルスは、HI価が低下し多くのアミノ酸置換を持つ株と、比較的変異の少ない2つのサブクレードの株が分離されている。さらに、B型インフルエンザウイルスはVictoria系統と山形系統が同時流行していることから、どちらの系統が主流になるのか、AH3亜型の流行とあわせて今後も引き続き調査していく必要があると考える。
参考文献
1)IASR 32: 334-335, 2011
2)IASR 32: 336-337, 2011
3)IASR 32: 367, 2011
4)IASR速報 https://idsc.niid.go.jp/iasr/rapid/pr3851.html
5)IASR速報 https://idsc.niid.go.jp/iasr/rapid/pr3854.html
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