国立感染症研究所

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆インフルエンザ

 

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫が付着した手指等を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。

 2014/2015年シーズンのインフルエンザは、2014年第42週以降増加が続いていたが、2015年第1週には一旦減少した。以後は再び増加し、第4週(2015年1月19~25日:2015年1月28日現在)では定点当たり報告数が39.42となった〔インフルエンザの年別・週別発生状況(本号10ページ参照):http://www.nih.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html〕。2014年第52週は全国的に幅広い年齢層で流行していたが、2015年第1週に15歳未満の年齢層の報告数が一旦減少し、第1週以降は第4週まで15歳未満が大きく増加した。一方、15歳以上の年齢層は第2週または第3週をピークに第4週に至るまで減少し、この結果、第4週の15歳未満の年齢層の報告数は71%を占めた。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を受診した患者数を推計すると、第4週は約192万人(95%信頼区間:179~205万人)となり、第2週(約206万人)や第3週(約201万人)の推計値よりも減少した。年齢群ごとの推計患者数としては、第2週に全年齢群で増加が認められ、その後15歳未満の年齢層のみ継続して増加した。基幹定点からのインフルエンザによる入院患者数は2014年第52週から増加傾向であったが、2015年第4週(1,644例)は前週(1,797例)より減少した。このうち60代以上の年齢層は、第52週(382例)から第2週(1,163例)にかけて増加し、継続して入院患者数の半数以上を占めたが、第4週(1,053例)は前週(1,180例)より減少した。同様に、15歳から60歳未満の年齢層も第4週(121例)では前週(176例)より減少した。一方、15歳未満の年齢層は第52週(268例)から第4週(470例)まで増加し続けた。これらの推計患者数および入院患者数の減少傾向と定点報告数の増加傾向との乖離は、インフルエンザの定点医療機関の約6割が小児科であること、推計患者数は定点以外を含む全国の医療機関を反映していること、および、入院報告数は主に小児と高齢者の重症患者を反映することによると考えられる。

 2015年第4週の定点当たり報告数は、31都道府県で前週の報告数よりも増加し16府県で減少した。国内のインフルエンザの定点当たり報告数をみると、2014年第52週までに東日本から西日本へ移りつつあった流行は、第2週には全国に拡大した。第4週の定点当たり報告数では、宮崎県(86.05)、鹿児島県(78.59)、山口県(75.12)、熊本県(71.68)、大分県(71.57)の順となり、流行の中心は西日本となった。直近の5週間(2014年第52週~2015年第4週)では依然としてAH3亜型の検出割合が最も多く(約97%)、次いでB型、AH1pdm09の順となっている(インフルエンザウイルス分離・検出速報:http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)。

 2015年第4週現在、2014/2015年シーズンは若年層を中心とした流行が依然として続いており、インフルエンザの感染対策を引き続き行っていく必要がある。また、今季はAH3亜型の検出割合が継続して高いが、流行地域の拡大や流行しているインフルエンザウイルス亜型の動向が変化する事も有り、発生動向には注意が必要である。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクをしたり、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆ったりする等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生といった対策を徹底することが重要である。高齢者等の高危険群に属する者が多く入所している施設における感染事例が複数報告されていること等から、施設内における感染予防の観点から、入所者や職員が個人で出来る前述の感染対策を徹底すると同時に、訪問者等においては、施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、インフルエンザの症状が認められる場合、施設を訪問することを控えることが重要である。なお、65歳以上の高齢者、又は60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は予防接種法上の定期接種の対象となっている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html)。

 インフルエンザの感染症発生動向調査に関する背景・詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:

●感染症発生動向調査週報(IDWR)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html
●インフルエンザ流行レベルマップ
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html
●IASR インフルエンザ2013/14シーズン
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/592-idsc/iasr-topic/5144-tpc417-j.html
●インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
●インフルエンザ啓発ツール
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html
●Influenza Situation Update
http://www.wpro.who.int/emerging_diseases/Influenza/en/

 

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