国立感染症研究所

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆インフルエンザ

 

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路は咳、くしゃみ、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物に触れた手指を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続くが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。通常は1週間前後の経過で軽快する。

 2015/2016年シーズン〔2015年第36週(2015年8月31日〜9月6日)以降〕のインフルエンザは、2015年第41週(2015年10月5〜11日:2015年10月14日現在)では定点当たり報告数は0.06で、過去数週間において同程度の水準で推移している(インフルエンザの年別・週別発生状況:http://www.nih.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html)。基幹定点からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)の状況においては、過去数週間、週当たり5〜9例で推移していたが、直近の第41週における入院患者数は11例とやや増加した。なお、今シーズンの累積入院患者数は70歳以上の高齢者が21/45例(46.7%)と約半数を占めた(インフルエンザの発生状況について:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)。2015年第41週(2015年10月14日現在)までの都道府県別定点当たりの報告数は、沖縄県を除き1.00を下回っており、大きな増加はみられない。沖縄県は今シーズン開始より、毎週定点当たりの報告数が1.00以上で推移しており、第41週では1.22(前週は1.24)であった。今シーズン開始以降、これまでAH3亜型15株、AH1pdm09型10株、B山形系統2株、Bビクトリア系統1株が検出された(2015年10月16日現在)。

 例年のインフルエンザ流行は、定点当たり報告数が1.00以上(流行開始の指標)となる11月末から12月にかけて流行が開始し、ピークは1月末から2月上旬が多い。2014/2015年シーズンは例年と比較すると、2週間程度早く立ち上がり、ピークの時期は1月中旬から下旬となった〔今冬のインフルエンザについて(2014/15シーズン):http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1415.pdf〕。昨シーズンはAH3亜型が主流となり、長期療養者医療施設等で集積事例を認めた。今後、インフルエンザの流行期を迎えるにあたり、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクを着用し、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆う等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生を徹底することが重要である。高齢者における感染への警戒の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、関係者が個人で出来る予防策を徹底すると同時に、訪問者等においては、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の工夫が重要である。なお、65歳以上の高齢者、又は60〜64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は、予防接種法上の定期接種の対象となっている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/)。

 今後のインフルエンザの感染症発生動向調査には注意をしていただくとともに、詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:

 

●感染症発生動向調査週報(IDWR)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html
●今冬のインフルエンザについて(2014/15シーズン)
http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1415.pdf
●インフルエンザの発生状況について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkakukansenshou01/houdou.html
●インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
●インフルエンザ啓発ツール
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html
●平成26年度 今冬のインフルエンザ総合対策について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/
●Influenza Situation Update
http://www.wpro.who.int/emerging_diseases/Influenza/en/

 

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