IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆インフルエンザ

 

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路は咳、くしゃみ、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物に触れた手指を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続くが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。通常は1週間前後の経過で軽快する。

 2016/2017年シーズンのインフルエンザは、2016年第45週(2016年11月7〜13日:2016年11月16日現在)では定点当たり報告数が0.84で、前週の定点当たり報告数0.59よりも増加した(インフルエンザの年別・週別発生状況:http://www.nih.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html)。都道府県別では、沖縄県(7.97)、栃木県(2.86)、北海道(1.92)、福井県(1.91)、岩手県(1.54)、群馬県(1.36)、埼玉県(1.12)、東京都(0.94)、石川県(0.92)、茨城県(0.90)の順に多く、沖縄県以外では東日本の自治体で多く報告された。39都道府県では前週よりも報告数が増加した。

 定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を受診した患者数を推計すると、2016年第45週は約5万人(95%信頼区間:4〜5万人)となり、前週の推計値(約3万人)よりも増加した。年齢別では、5〜9歳が約1万人、20代が約1万人でいずれも前週よりも増加し、男女比は1:1であった。また、第36週以降の定点医療機関の受診患者の男女比は、15歳未満の年齢群では1.1:1とやや男性に多く、30代から50代の年齢群では1:1.25と女性に多かった。なお、2016年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約19万人となった。

 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数(インフルエンザ入院サーベイランス)は、直近の第45週が53例で、前週の38例よりも増加した。なお、現時点で、今シーズンの累積入院報告数は70歳以上の高齢者が179/301例(59%)と半数以上を占めている(インフルエンザの発生状況について:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)。

 インフルエンザウイルスの検出状況をみると、直近の5週間(2016年第41〜45週)ではAH3亜型の検出割合が多く、次いでAH1pdm09であった(インフルエンザウイルス分離・検出速報:http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)。

 例年のインフルエンザ流行は、11月末から12月にかけて始まり、1月末から2月上旬にかけてピークとなることが多い〔今冬のインフルエンザについて(2015/16シーズン):http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1516.pdf〕。2016/2017年シーズンは、定点当たり報告数の増加が例年より早く、過去5年間の同時期と比較して、第39週以降毎週平均+2標準偏差(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)を超えている。

 今後、インフルエンザの流行期を迎えるにあたり、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクを着用し、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆う等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生を徹底することが重要である。高齢者における感染への警戒の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために関係者が個人で出来る予防策を徹底すると同時に、訪問者等においては、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の工夫が重要である。なお、65歳以上の高齢者、又は60〜64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は、予防接種法上の定期接種の対象となっている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/)。

 今後のインフルエンザの感染症発生動向調査には注意をしていただくとともに、詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:

 

●感染症発生動向調査週報(IDWR)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html
●インフルエンザ流行レベルマップ
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html
●インフルエンザウイルス分離・検出速報
http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html
●今冬のインフルエンザについて(2015/16シーズン)
http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1516.pdf
●平成28年度インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
●インフルエンザ啓発ツール
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu.html
●平成28年度今冬のインフルエンザ総合対策について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/

 

   国立感染症研究所 感染症疫学センター

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