日本における薬剤耐性菌による死亡数の推計について

 

MRSAによる菌血症とフルオロキノロン耐性大腸菌による菌血症で年間約8,000名が死亡

国立感染症研究所薬剤耐性研究センター(感染研AMR研究センター)は、国立国際医療研究センターが実施している薬剤耐性菌による死亡数の推計に関する研究に共同研究者として参加しています。2019125日、国立国際医療研究センターはMRSAとフルオロキノロン耐性大腸菌よる死亡数の推計を発表しました1)。この研究において感染研AMR研究センターは、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)2)のデータベースから抽出したデータを集計するためのプログラムを国立国際医療研究センターに提供しました。国立国際医療研究センターでは、全国の医療機関のJANIS参加率から、国内におけるそれぞれの菌種による血液検体由来の分離件数を推計し、さらに死亡率を乗じて死亡数を推計しました。その結果、MRSAとフルオロキノロン耐性大腸菌よる死亡数が約8,000名と推計しました3)。なお、この推計人数は、耐性菌ではない場合と比較した超過死亡数ではなく、MRSAならびにフルオロキノロン耐性大腸菌による死亡数です。

 

・国内での薬剤耐性菌全体による死亡数の推計にはさらに研究が必要

MRSAとフルオロキノン耐性大腸菌以外にも死亡の原因となる薬剤耐性菌は多くの種類があります。欧米では臨床的によく分離される薬剤耐性菌について死亡数が推計されています4), 5)。日本においても薬剤耐性菌全体による死亡数を推計するために、さらに対象の菌種を広げて解析を行う予定です。

 

1) http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20191205_press.pdf

2) https://janis.mhlw.go.jp

3) https://doi.org/10.1016/j.jiac.2019.10.017

4) https://www.cdc.gov/drugresistance/biggest-threats.html

5) Cassini A et al. Lancet Infect Dis. 2018 Nov 5. pii: S1473-3099(18)30605-4.

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