国立感染症研究所

中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査実施要領(2017年7月7日更新)

国立感染症研究所
平成29年7月7日版

2012年9月以降、中東地域に居住または渡航歴のある者を中心に中東呼吸器症候群(MERS)の患者が断続的に報告されており、医療施設や家族内等において限定的なヒト-ヒト感染が確認されていることから、接触者調査を実施し、適切な対策を実施することで感染拡大を防止することが重要である。また、高齢者や基礎疾患のある者に感染した場合、重症化する恐れもあることから、患者に対する適切な医療の提供も重要である。なお、中東においては、ラクダとの接触歴はMERS-CoV感染のリスクとなることが示唆されている。

本稿は、国内で探知された中東呼吸器症候群(MERS)の疑似症患者及び患者(確定例)等に対して、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第15条による積極的疫学調査を迅速に実施するため、平成26年7月30日に作成(平成27年7月10日改訂)した中東呼吸器症候群(MERS)に対する積極的疫学調査実施要領を、今回、「中東呼吸器症候群(MERS)の国内発生時の対応について(健感発0707第2号、平成29年7月7日)の通知(以下「通知」という。)において、疑似症患者の定義等が変更されたことに伴い、改定を行った。

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(調査対象)
積極的疫学調査の対象となるのは、以下に定義する「積極的疫学調査の対象となる疑似症患者」、「患者(確定例)」、「濃厚接触者」および「その他の接触者」である。
「疑似症患者」の定義は、「通知」の「MERS疑似症患者の定義」を参照する。一方、「積極的疫学調査の対象となる疑似症患者」とは、「通知」のとおり、「MERS疑似症患者の定義」を満たし、かつ、地方衛生研究所で実施されたPCR検査により少なくとも1つの遺伝子領域のMERSコロナウイルス遺伝子が陽性であったものを指す。しかし、「疑似症患者」のうち、MERSに感染している蓋然性が高いと考えられる場合(例:「通知」の定義1に合致する場合)は、MERSコロナウイルス遺伝子が陰性であると確認されるまでは「積極的疫学調査の対象となる疑似症患者」に準じた対応をとることも考慮する。
「患者(確定例)」とは、「通知」の「感染確定例」を指す。
「症例」は、「積極的疫学調査の対象となる疑似症患者」と「患者(確定例)」の両者をさす。
「濃厚接触者」とは、症例が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当するものである。
  1. 世帯内接触者: 症例と同一住所に居住する者
  2. 医療関係者等: 個人防護具を装着しなかった又は正しく着用しないなど、必要な感染予防策なしで、症例の診察、処置、搬送等に直接係わった医療関係者や搬送担当者
  3. 汚染物質の接触者: 症例由来の体液、分泌物(痰など(汗を除く))などに、必要な感染予防策なしで接触した者等
  4. その他: 手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、症例と接触があった者等
「その他の接触者」とは症例が発病した日以降に症例と同じ病棟に滞在する等空間を共有する接触があったもののうち、濃厚接触者の定義に該当しないものや、必要な感染予防策をした上で症例や症例由来の検体と接触した医療関係者や搬送担当者等を含む。症例が発病後、公共交通機関等、不特定多数の者が利用する施設の利用があった場合は、その症状や、状況等を検討した上でメデイア等を使った接触者探知を行う必要があるかどうかを検討する。
(調査内容)
症例について、基本情報・臨床情報・推定感染源・接触者等必要な情報を収集する。(調査票添付1,2-1,2-2,2-3)
濃厚接触者については、最終曝露から14日間、一日2回健康観察を実施するとともに、当人の生活状況(MERSのハイリスク者(例:高齢者、基礎疾患のあるもの))等を勘案し、全く自宅から外出しない、公共交通機関を利用しない、勤務先に出社等しない等のうち適切な措置を要請する。また、健康観察を十分に行うために長距離の移動等は控えるように要請する。(調査票添付3)
その他の接触者については、最終曝露から14日間、一日2回健康観察を実施する。
濃厚接触者およびその他の接触者については、健康観察中に37.5℃以上の発熱、または急性呼吸器症状(上気道または下気道症状)がある者(以下「検査対象者」という。)については、症状が出てきた場合に、保健所へ連絡をするようにし、検査を実施し、その結果に応じて必要な調査と対応を行う。
 
(調査時の感染予防策)
積極的疫学調査の対応人員が症例及び検査対象者に対面調査を行う際は、手袋、サージカルマスクの着用と適切な手洗いを行うことが必要と考えられるが、現時点では、疫学的な知見に乏しい新興の呼吸器感染症への対応として、眼の防護具(フェイスシールドやゴーグル)、ガウンを追加し、必要に応じてサージカルマスクではなくN95マスクを着用する。(PPE(個人防護具)着脱に関するトレーニングを定期的もしくは事前に積んでおくことが重要である。)
 
(濃厚接触者およびその他接触者への対応)
濃厚接触者やその他接触者の家族や周囲の者(同僚等)に対しては、特段の対応は不要である。
濃厚接触者およびその他接触者については、手洗いと咳エチケットを徹底するように指導する。
検査対象者については、検査結果が判明するまでの間、感染伝播に十分に配慮する必要があり、本人の同意を得た上で、医療施設における個室対応などの対応も選択肢となりうる。
 
(とりまとめ)
濃厚接触者およびその他接触者の健康情報については、複数の保健所が関与する場合、初発症例の届出受理保健所又は濃厚接触者およびその他接触者の多くが居住する地域を所管する保健所が適宜とりまとめる。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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