国立感染症研究所

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東京都における風しんの発生状況(2012年~2013年第8週)

(IASR Vol. 34 p. 101-102: 2013年4月号)

 

2013年第1~8週までの東京都における風しんの累積報告数は502例であった。これは2012年の同時期(11例)と比較して45.6倍の報告数である。

2008年から風しんは全数報告対象疾患となったが、2008~2011年まではそれぞれ年間に46例、19例、15例、32例であった。

2012年の第22週から風しんの報告は増加し、第27週に全数報告対象疾患となって以来最大の1週間当たり38例の報告数を記録した(図1)。その後、周期的な増減を繰り返しながら推移し、2012年は年間で672例の報告数となった。

2013年の状況は、2013年2月28日現在の第8週報告分までを対象とする。第1週以降、増加傾向は続き、第2~5週は2012年の最高値を超える40例前後で推移した。第6週と第7週にはその2倍以上の報告数、第8週には1週間に133例となり、2013年の第8週までの累積報告数は502例となった(図1)。

2012年第1週~2013年第8週までに都内510の医療機関から報告された累積報告1,174例について解析を行った。

性別は男性が917例(78.1%)、女性が257例(21.9%)であり、男性が女性の3.6倍報告されていた。ワクチン接種歴は接種歴のない症例が男性で26.4%(242例)、女性で31.1%(80例)であった。推定感染地域は国内1,160例(うち東京都 800例)、国外10例、国内または国外4例であった。また、年齢は男性の年齢中央値34.0歳(Q1-Q3:26.0-40.0)、女性の中央値25.0歳(Q1-Q3:20.0-31.0)であり、20歳以上の症例の占める割合は男性で92.1%(845/917)、女性で78.6%(202/257)であった。女性のうち15~44歳を出産年齢とすると、この年齢群に含まれる女性は202例であり、女性全体の78.6%を占めた。これらの例におけるワクチン接種歴は、接種なし65例(32.2%)、1回接種13例(6.4%)、2回接種4例(2.0%)、不明 120例(59.4%)であった。

風しん診断時の男女別年齢を図2に示した。定期ワクチン接種機会のなかった30代以上の男性が多く報告されていたが、2012年の11月頃からワクチン接種歴のない20代女性の感染割合も増えた。さらに、今年に入り、10歳未満の小児の患者も報告され始め、全年齢層の感受性者へ感染が拡大している。

同期間内に、健康安全研究センターウイルス研究科では感染症発生動向調査、積極的疫学調査、ならびに当センターにおける感染症レファレンス事業により麻しんウイルス検査を行っていたが、それらのうち、陰性検体について病因検索を行うために風しんウイルスの遺伝子検査を行った。風しんウイルスの陽性検体数は566検体中190検体で、男性147検体(77.4%)、女性43検体(22.6%)であった(図3)。また、陽性者の平均年齢は、男性30.4歳、女性23.9歳であった。 

企業や学校、あるいは施設での集団発生が都内全域でみられるとともに、2013年第7週には島しょ保健所から報告があり、地理的に離れた地域への感染拡大が示された。また、本来春先から夏に流行する疾患であるので、今後さらに患者が増えることが予想される。先天性風しん症候群発生リスクが高まっているため、妊娠希望の女性、また、妊婦の家族は予防接種を受けることが推奨される。

 

東京都健康安全研究センター
企画調整部危機管理情報課 高橋琢理 杉下由行 灘岡陽子
微生物部ウイルス研究科 長谷川道弥 林 志直

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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