国立感染症研究所

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世界的なポリオ根絶に向けた現状、2014~2015年

(IASR Vol. 36 p. 146: 2015年7月号)

1988年世界保健総会がポリオ根絶を決議して以来、野生株ポリオウイルス(WPV)の常在的な感染伝播はアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンを除くすべての国で遮断されていた。2012年11月以来、3つのWPVのうち検出されているのは1型だけである。2012年、WHOは世界保健総会で、ポリオ根絶を「国際的な公衆衛生のための緊急プログラム」として宣言し、2014年にはWHOは残るポリオ常在国から非ポリオ常在国へのWPVの継続的、国際的な拡大を懸念し、国際保健規則に基づく「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言した。2014~2015年におけるポリオ根絶に向けた現状について要約する。

WPVによる急性弛緩性麻痺(AFP)の報告数の推移: 2014年WPV1によるAFPが359例(2013年は416例)報告されており、ポリオ常在国ではパキスタンで306例(2013年は93例)、アフガニスタンで28例(2013年は12例)と増加、一方ナイジェリアでは6例(2013年は56例)と減少していた。また、非ポリオ常在国への輸出例は19例(全報告数の5%)であった。

なお2015年5月の時点では、WPV1は23例(2014年の同期間では55例)が報告されており、1例はアフガニスタン、22例はパキスタンからの報告であった。WPV2の検出は1999年以降なく、WPV3の検出は2012年のナイジェリアの症例が最後であった。

予防接種活動:経口生ポリオワクチン(OPV)の定期接種について、2013年の1歳までの乳児におけるOPV(3回)接種率は、アフガニスタン90%、ナイジェリア67%、パキスタン66%であった。

補足的ワクチン接種活動(SIAs)として、2014年は341回の活動において23億回分のOPVが投与された。

ポリオ常在国であるナイジェリアでは新規のWPV症例の発生に対し国家的対策がとられ、アフガニスタンやパキスタンでは紛争などで立ち入りが困難な国境境界周辺や難民の小児をワクチン接種対象とした。

WPVサーベイランス:WPV伝播を表すためのAFPサーベイランスの質を表す指標として、AFPのうちでポリオウイルス以外によるものの割合〔非ポリオAFP(NPAFP)率〕とAFPからの便検体採取率の2つがあるが、2010~2014年でポリオ(WPVまたはcirculating vaccine-derived poliovirus: cVDPV)の報告がある29カ国において両方の指標を満たすものは72%であった。一方、ポリオ常在国の3カ国においては両指標を満たしているものの、疫学的、環境的、ウイルス学的サーベイランスデータの間に差がみられた。

まとめ:ポリオの感染伝播の制御と排除に関する近年の対策は、予防接種とサーベイランスの強化により世界的に維持されるべきである。パキスタンやアフガニスタンからのポリオ輸出例を減らしていく試みは、ポリオを世界から永久的に根絶する可能性を高めることにつながる。 

(WHO, WER 90: 252-260, 2015)
(抄訳担当:感染研・渡邉愛可、島田智恵)

 

 

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