国立感染症研究所

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The topic of This Month Vol.35 No.9(No.415)

HIV/AIDS 2013年

(IASR Vol. 35 p. 203-204: 2014年9月号)

わが国は、1984年にエイズ発生動向調査を開始し、1989年~1999年3月はエイズ予防法、1999年4月からは感染症法の下に施行してきた。診断した医師には全数届出が義務付けられている(届出基準はhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html)。本特集の統計は、厚生労働省エイズ動向委員会:平成25年エイズ発生動向年報に基づいている(同年報は厚生労働省疾病対策課より公表されている; http://api-net.jfap.or.jp/status/2013/13nenpo/nenpo_menu.htm)。

届出患者は、HIV 感染者とAIDS患者に分類され、その定義は脚注*の通りである。2007年以降、毎年、HIV感染者とAIDS患者を合わせ1,500件前後報告されており、2013年現在の累積報告件数は2.3万である(図1)。世界中では、約3,500万のHIV感染者/AIDS患者がおり、年間、約230万人の新規感染者、約160万人の死亡者が出ていると推定されている(2013年のUNAIDS発表; http://www.unaids.org/en/)。

なお、国内のHIV診断検査の実態、長期抗HIV薬治療下で起こるAIDS 以外の病態等に関しては、特集関連記事(本号3~14ページ)に記載する。

1. 1985~2013年のHIV/AIDS報告数の推移:2013年に新規に報告されたHIV感染者数は1,106(男性1,060、女性46)、AIDS患者数は484(男性466、女性18)で、HIV感染者数は過去2位(2007年以降、年間1,002~1,126)、AIDS患者数は過去最多であった(図2)。1985~2013年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)は、HIV感染者15,812(男性13,578、女性2,234)、AIDS患者7,203(男性6,488、女性715)(2013年10月1日人口10万対累積HIV感染者は12.4、同AIDS患者は5.7)であった。なお、「血液凝固異常症全国調査」(2013年5月31日現在)によると、血液凝固因子製剤によるHIV感染者は累積1,439(死亡者691)である。

国籍・性別:2013年は、HIV感染者1,106中、日本国籍者は996 (男性963、女性33)、外国国籍者は110 (男性97、女性13)で、日本国籍男性がHIV感染者の87% (963/1,106)、AIDS患者の91%(438/484)を占めた。

HIV感染者の感染経路・年齢群別: 男性同性間性的接触による感染が大多数を占め〔全体の71%(780/1,106)、日本国籍男性HIV感染者の75%(726/963)〕(図3参考)、その大多数は20~40代であった(図4)。日本国籍女性HIV感染者 の79%(26/33件)が異性間性的接触であった。なお、2013年には母子感染が1件報告されている。年代別人口で10万対の発生数を比較すると、ほとんどの年代で罹患率が上昇傾向にあり、特に25~29歳で顕著であった。

HIV感染者の推定感染地域:1992年までは海外での感染が主であったが、それ以降は国内感染が大部分である。2013年でも、HIV感染者の推定感染地域は、国内感染が全HIV感染者の85%(939/1,106)、日本国籍者の90%(893/996)であった。

報告地(医師により届出のあった地):報告地の地域別では、HIV感染者・AIDS患者ともに、関東・甲信越、近畿、東海地域の件数が多くを占めた(表1)。

2. 献血者のHIV抗体陽性率:2013年には、献血件数5,205,819中63件(男性61件、女性2件)の陽性者がみられ、献血10万件当たり1.210(男性1.690、女性0.125)で2012年(1.290)を下回った(図5)。

3. 自治体が実施したHIV抗体検査と相談:自治体が実施した保健所等におけるHIV抗体検査の近年の実施件数は、2013年には136,400件(2012年131,235件)で、ほぼ横ばいである(ピークは2008年)(図6)。陽性件数は453 (2012年469)、陽性率は0.33%(2012年0.36%)であった。うち保健所での検査陽性率は0.26%(273/105,531)、自治体が実施した保健所以外での検査における陽性率は0.58%(180/30,869)で、後者での検査の陽性率が高かった。また、2013 年の相談件数は145,401件(2012年153,583件)と5年連続で減少した。

まとめ:2013年のHIV感染者数とAIDS患者数を合わせた年間新規報告件数は1,590(2012年1,449)で過去最多であった。特にAIDS患者数の増加が続いており、2013年の報告件数の30%あまりがAIDS発症によりHIV感染が判明しており、HIV感染者の多くが早期発見に至らず、自身の感染を知らないHIV感染者の存在が示唆される。HIV感染の早期診断のために、国および各自治体レベルで、感染者・患者発生の特徴(特に20代のHIV罹患率の高さと60歳以上のAIDS患者数の増加)を把握し、予防や早期発見の啓発とそれを推進する効果的な対策を立案・実施し、感染拡大の抑制・早期治療の促進を図ることが重要である。対策が重要な男性同性愛者、青少年、性風俗産業従事者およびその利用者などが受けやすい時間帯や場所での検査・相談の提供、受診しやすい環境整備における工夫が引き続き望まれる。なお、対策を講ずる際には、人権への配慮や、必要な関係者(企業、NGO、医療関係者、教育関係者等)と協力して実行することが重要である。

本邦のHIV感染症克服に向けては、グローバルなHIV感染拡大抑制に結びつく取り組みに加え、国内の感染動向の把握、予防啓発、早期診断・治療に向けた取り組みが必要となる。抗HIV薬治療の導入はAIDS発症抑制を可能にしたが、治癒は現状では望めない。長期投薬継続が必要となり、薬剤耐性株の出現や、抗HIV薬治療下のウイルス複製抑制状態における神経認知障害、骨粗鬆症、心血管障害等の促進が問題となってきている。

*HIV感染者:感染症法に基づく届出基準に従い「後天性免疫不全症候群」と診断されたもののうち、AIDS指標疾患(届出基準参照)を発症していないもの

**AIDS患者:初回報告時にAIDS指標疾患が認められAIDSと診断されたもの(既にHIV感染者として報告されている症例がAIDSと診断された場合は除く)

 

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