注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
レジオネラ症は感染症法に基づく感染症発生動向調査において医師に全数届出が義務付けられている2)。2010年以降、毎年報告数が増加しており3)、2013年には、過去最多の1,111例が報告された4)。2014年は第1~25週に464例が報告されており、前年同期間報告数の328例5)を上回った。また、近年の年間発生動向として、主に7月(第27~31週)にピークを迎えており3)、本年も5月後半(第20~21週)から増加傾向である(図1)。 本年第25週までの地域分布、年齢・性別、致命率、職業等に関しては近年の傾向と同様であった。感染地域では、主として国内であり〔451例(97%)〕、症例が多く発生した都道府県は人口の多い東京都(45例)、神奈川県(43例)、大阪府(29例)が上位3位であり、罹患率は富山県と石川県が高い傾向を示した3)。診断法も以前と変化は無く3)、殆どの症例は尿中抗原検出〔426例(92%)〕で診断されていた。 患者の年齢中央値は73歳(範囲:31~103歳)であった。近年の発生動向と同様に男性がその大半〔346例(75%)〕を占め、性別によって年齢分布が大きく異なる傾向を示した(図2)。患者発生動向調査上の届出時点での報告という制約がある中での情報として、死亡は13例〔男性12例、女性1例;年齢中央値80歳(範囲:43~94歳);致命率3%〕で、これまでと同様に疾病負担が高齢の男性に偏っていた3)。職業は、高齢者が多いため無職が過半数を占めたが〔282例(61%)〕、採掘・建設業務従事者、金属材料製造作業者および輸送機械組立・修理作業者、運転手等も多かった3)。 高齢化の進む日本社会において、レジオネラ症の重要性は増加すると考えられる。レジオネラ属菌は、もともと土壌や水環境に普通に存在する菌である。しかしながら、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、ビル屋上に立つ冷却塔、ジャグジー、加湿器等)や循環水を利用した風呂が屋内外に多くなっていることなどが感染する機会を増やしているものと考えられる。近年、大半の症例は感染源が明らかではない国内単発例のため、レジオネラ症の疫学をより明確に把握し、公衆衛生対策に繋げる必要性がある。医療従事者は、特に今の季節に高齢男性の肺炎を診療した場合、入浴施設等の利用歴が無くても、鑑別にレジオネラ感染症の可能性も考慮し対応して頂きたい。 【参考文献】
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