WHOポリオ流行国一覧からのナイジェリアの削除(2国のみが流行国へ)
(IASR Vol. 37 p. 29-30: 2016年2月号)
2015年9月25日、世界保健機関(WHO)は、ナイジェリアは、もはやポリオ流行国ではないことを発表した。ナイジェリアが野生のポリオウイルス伝播を遮断したのは初めてのことであり、ナイジェリアおよびアフリカ地域はポリオ根絶の認定に対して大きく前進した。
ポリオを根絶するための努力をリードしている官民パートナーシップである『ポリオ根絶のためのグローバルイニシアティブ(the Global Polio Eradication Initiative: GPEI)』は、今回の出来事を、人類の健康における「歴史的な成果」と呼んだ。2014年7月24日以来、ナイジェリアは野生ポリオウイルス感染症例を報告しておらず、すべての検査データを参照した結果、この12カ月間は新しい症例の報告がなく経過したことが確認された。
2012年には、世界中の全ポリオ症例の半数以上をナイジェリアからで占めた。以来、政府、市民団体、宗教指導者、数万人の医療従事者による努力が結集された。全国20万人以上のボランティアが、5歳未満の4,500万人以上の児童に繰り返しワクチンを投与した。コミュニティをより多く巻き込むことや、国や州レベルでの緊急オペレーションセンターを設立することなどの革新的なアプローチは、ナイジェリアの成功に重要な要因となった。
ナイジェリアにおける野生株ポリオウイルス伝播の遮断は、様々なドナーや開発パートナーの支援との関わりなしには不可能であったであろう。このような団体の継続的な支援は、ナイジェリア国内からの継続的な資金調達とともに、ナイジェリアやアフリカ地域全体におけるポリオ根絶を維持するために不可欠である。
不可逆性の麻痺を引き起こすポリオは、25年間の協調的な国際的取り組みにより、世界のあらゆるところで発生がなくなっている。ただし、パキスタンとアフガニスタンの2カ国は依然としてポリオ流行国のままである。世界規模でのポリオ根絶は、これらの国々でポリオの新規発生を止められるかどうかに主に依存する。ポリオが地球上のどこかに存在している限り、それは子供たちへの脅威である。
ナイジェリアはポリオ根絶に関して著しい進歩を遂げたが、継続的な警戒が必要であり、それにより、根絶により得られた利益を保護し、元の状態に戻さないことを確実にすることができる。ワクチン接種およびサーベイランス活動により、ウイルスの潜在的な再侵入あるいは再出現を迅速に発見し続けるべきである。3年の間、アフリカ大陸で野生株ポリオウイルス感染症例なしで経過した後、ポリオ根絶の公式な「認証」が、アフリカの地域レベルで行われることになるであろう。
ポリオ根絶は人類史の中で最大の成果の一つであり、次世代の健康にグローバルなプラスの影響を与えることになる。ナイジェリアは、この目標を達成するために大きな一歩を世界にもたらした。このことは、我々がポリオ根絶活動を良い結果で終了させ、次世代がこの壊滅的な病気から自由になることを確かにする機会を持っているということにおいて重要である。
(抄訳担当:感染研・砂川富正)