国立感染症研究所

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母子破傷風の排除:インドの4つの地域における検証調査, 2013年4月

(IASR Vol. 35 p. 160: 2014年6月号)

新生児破傷風の致死率は最大80%で、原因は母親のワクチン未接種、不衛生な分娩(自宅での分娩含む)など母体破傷風と同一であり、1989年における全世界の死亡数は787,000/年であった。世界保健総会は1995年までに全世界における排除(定義:<1例/1,000出生時)を目標とした。インドでは1980年に国内12地域における死亡数が906,577~115,935人/年であり、ワクチン不足、自宅での出産が原因であった。その結果、妊婦へのワクチン接種、衛生的な分娩、清潔な分娩道具の分配、妊婦への衛生教育といった対策がとられ、安全な分娩が52.3%(2007年)から76.2%(2009年)に改善した。ワクチン接種率も2009年には多くの地域で約80%に達し、2008年までに15の地域で新生児破傷風が排除された。 

2013年の排除を目標にニューデリー、ミゾラム、オリッサ、ウッタラーカンドの4地域で2012年から調査が行われた。この調査ではロット品質保証標本抽出法により、新生児破傷風の排除定義に合致しているかを評価した。調査で発見できた死亡数が、予測される死亡数よりも50%未満の場合は、調査の質が低いと判断した。結果、ニューデリー、ミゾラム、オリッサ、ウッタラーカンドにおける新生児破傷風の全原因による死亡数はそれぞれ18例、20例、18例、35例であったが、新生児破傷風による直接死亡数はいずれも0例であった。この結果、ニューデリー、ミゾラム、ウッタラーカンドでは新生児破傷風の排除が考えられ、オリッサは調査で発見できた死亡数が、予想される死亡数の38.8%のため、調査の質が不良で追加調査が必要と考えられた。破傷風の芽胞は環境中から排除できないため、継続した対策が必要であり、インド政府は、ワクチン接種機会の増加、より安全な分娩の推進、信頼できるサーベイランスシステムの構築、新生児死亡の登録システムの構築、妊婦や母親への教育などを行い、2015年までに全地域において完全な排除を目標としている。

(WHO, WER 89 (18):177-188, 2014)

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