国立感染症研究所

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近年の国内HIV/AIDS発生動向

(IASR Vol. 35 p. 207-208: 2014年9月号)

HIV感染症は感染症法に基づき発生報告が義務づけられている5類感染症である。1984年に開始されたエイズ発生動向調査によると、HIV感染者数とAIDS患者数を合わせた年間新規報告件数は2008年をピークとして、1,500件前後で推移していたが、2013年には1,590件で過去最多となり、累計報告件数は23,015件に達した。特に、HIV感染者数とAIDS患者数を合わせた年間新規報告件数のうち30%あまりが後者、つまりAIDSと診断されてHIV感染が判明したものであることは、本邦において報告件数以上のHIV感染者が存在することを意味している。本稿では、エイズ発生動向調査等から得られた情報をもとに、HIV感染動向の実態把握に向け、いくつかの留意点を述べることとする。

まず、年齢構成について、2013年の新規報告数をみると、20代~40代が多く、30代後半(35~39歳)が最多である。年齢が上がるにつれ新規報告件数に占めるAIDS患者の割合が増加し、55歳以上では半数を超えていた。一方、人口統計を基にした年齢人口10万人当たりのHIV感染者数をみると、ほとんどの年代で罹患率が上昇傾向にあり、特に20代後半(25~29歳)で顕著であった(図1)。したがって、若年層のHIV罹患率の高さと高年齢層のAIDS患者数の増加には留意が必要と考えられる。

次に、感染経路として、同性間性的接触と異性間性的接触について、HIV感染者数とAIDS患者数を合わせた年間新規報告件数に占めるAIDS患者の占める割合を比較してみた。男性同性間性的接触によるものでは、AIDS患者は20%台で推移していたが、男性異性間性的接触によるものでは、40%台で推移しており、高い傾向がみられた。この結果について、男性異性間性的接触によるものとされた人々の中に同性間性的接触によるものが含まれている可能性を含め、いくつかの要因が考えうるが、HIV 感染検査の推進等を含めた啓発においては、同性間性的接触による感染リスクだけでなく、異性間性的接触による感染リスクについても十分留意した活動が望まれる。

最後に、HIV検査体制について述べておきたい。日本国内では、保健所等の公的機関が実施する無料検査が重要な役割を担っているが、近年、有償の郵送検査受検者が増加している。厚生労働省エイズ対策研究事業・HIV検査利用機会の促進に関する研究班の報告によると、2013年には保健所等の検査件数が13.6万件であったのに対し、郵送検査件数は6.5万件であった。この郵送検査については、公的な精度管理がなされていないことに加え、HIV感染が判明した人の受診率が低いことなどが課題であり、留意が必要である。今後、さらなるHIV 感染検査の推進に向け、心理的な面も含め、高精度の検査を受けやすい環境・体制の整備等の検討がなされることが期待される。

参考文献
  1. 厚生労働省エイズ動向委員会, 平成25年エイズ発生動向年報
  2. 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策事業「HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究」研究報告書(平成25年度)
国立感染症研究所エイズ研究センター 松岡佐織
 

 

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