国立感染症研究所

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ガーナ野口記念医学研究所―国立感染症研究所エイズ研究センターとの国際共同研究

(IASR Vol. 41 p185: 2020年10月号)

国立感染症研究所(感染研)では, 前身の国立予防衛生研究所の時代より, 海外との連携を進めてきた。1979年, ガーナ共和国に日本のODA(政府開発援助)により設立された野口記念医学研究所においても, 山崎修道博士(元所長), 佐多徹太郎博士(元感染病理部長), 筆者(エイズ研究センター主任研究官)等, 短期・長期滞在専門家派遣も含め, 下痢症・ポリオ・麻疹・HIV等の感染症研究に貢献してきた。感染研エイズ研究センターでは, 1993年より毎年, 国際協力機構(JICA)と共同で, アフリカ・アジア等の技術者・研究者を対象とする感染症診断検査技術等の講習〔毎年10数名, 約6週間(写真1)〕を行い, 現在に至っている。

2012年からは, ガーナ大学野口記念医学研究所ウイルス研究部門と感染研エイズ研究センターとの国際共同研究として, ガーナで流行するHIVのウイルスゲノムと感染者HLA遺伝子型の解析を開始した。この連携をさらに発展させることにより, 野口記念医学研究所・Ghana Health Service(GHS), 東京大学医科学研究所, 三重大学, 感染研の連携体制を構築し, 地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)プロジェクトに進展している(写真2)。本研究の進展により, まずは, ガーナにおいて次世代シークエンス(NGS)技術を用いた高精度のHLAタイピングシステムを導入し, 新規HLAアレルの発見に結びついている。また, HIV感染者におけるHLA遺伝子型情報を蓄積するとともに, HIVウイルスゲノム情報も収集し, HLA関連HIVゲノム変異同定に至っている。一方, 糞便サンプルの収集も進め, ガーナにおける健常者およびHIV感染者の糞便マイクロバイオーム解析を推進し, 数々の知見を得てきているところである。今後の進展により, 病原体ゲノム・宿主ゲノム・腸内マイクロバイオーム間の相互作用の解明に結びつくことを期待している。

本研究と関連して, ガーナからの若手研究者をエイズ研究センターで受け入れ, 熊本大学とも連携し, 人材育成にも努めている。本邦で学位(博士)を取得してガーナに帰国した2名は, ガーナ大学や野口記念医学研究所で, 研究・講義・検査等の業務で活躍している。アフリカCDCとの連携も含め, 今後も野口記念医学研究所が西アフリカ感染症研究拠点として発展していけるよう共同研究体制を維持・発展させていきたいと考えている。

 
 
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エイズ研究センター 石川晃一

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