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8 まとめ
 
 ここ十数年の間にHIV、HCV、SARS等が新たな感染症が発見され、さらに現在鳥インフルエンザの脅威が叫ばれています。HIV、HCVでは血液製剤による感染を防ぐ有効な対策が講じられるのが遅れ被害が広がったと問題になっています。一方、分子生物学の発達によって新たな治療法の開発が試みられています。このように生命科学や医学研究の発達によって、より医療の現場は一層複雑になってきています。一方、今後も未知の感染症や治療法の想定外の副作用などが発生する恐れもあり、そのような状況で我々は如何に準備していけば良いか、大変難しい問題であります。

 筆者は医学生時代に「病気を診ずして病人を診よ」と教わってきたことを覚えています。これは、医療者は疾病そのものの診断や治療だけにとらわれることなく、病をもっている人の心の痛みをよく理解し、患者さんを全人的に診て治療することの重要性を訴えているものであります。国、製薬会社、医療関係者、マスコミなどが患者の視点に立ってこのような精神を実践することで、新しい事態により早く的確に対応できると思われます。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan