国の肝炎対策

  日本では、1972年から輸血・血液製剤用血液のB型肝炎スクリーニングが開始された。1986年から母子感染防止事業が実施され、垂直感染によるHBV無症候性キャリアの発生は減少した。しかし、対象児童の10%で予防処置の脱落または胎内感染によると見られる無症候性キャリア化が報告されている。また、現在の日本のB型急性肝炎患者の年齢を見ると14歳以下の小児、又は70歳以上の高年齢層の報告数が少ない。以上から、B型肝炎対策は母子感染予防処置の徹底と水平感染、特に性感染対策の強化が肝要であると思われる。

 社会的に大きな問題となっていたB型肝炎訴訟が、2011年、当時の管首相が国の責任を認めて、裁判に訴えている人たちに謝罪し、解決に向けて動きだした。このB型肝炎訴訟は、幼少期に受けた集団予防接種等の際に、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに持続感染したとされる方々が、国に対して損害賠償を求めていた集団訴訟である。この訴訟については、裁判所の仲介の下で和解協議を進めた結果、20116月に、国と原告との間で「基本合意書」を締結し、基本的な合意がなされた。今後提訴をされる方々への対応も含めた全体の解決を図るため、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が2012113日から施行され、裁判上の和解等が成立した方に対し、法に基づく給付金等が支給されることになった。対象者は、7歳になるまでの間における集団予防接種等(1948年から1988年までの間に限る)の際の注射器の連続使用により、B型肝炎ウイルスに感染した方及びその方から母子感染した方(相続人)になる。給付金はその病態により異なるが、一人当たり最大3600万円になり、国は約43万人に支払う見込みとし、その費用は今後30年間で最大3.2兆円も必要になると説明している。

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