治療・予防

 HCV感染の予防はまず感染経路を遮断する事であり、以前はHCVの感染経路のうち輸血によるものが5割を占めていたが、我が国では1989年世界に先駆けて献血時にHCV抗体をスクリーニングするようになってから激減した。しかし、極めて稀であるが抗体を調べる方法では検出できない肝炎ウイルスの存在が問題となった。これらの輸血後肝炎の原因の多くは、血清学的検査法の「ウインドウ期」に献血された血液によるものである可能性が指摘されたため、「ウインドウ期」血液に含まれる極めて微量のウイルスを検出する高感度な検査法として、核酸増幅検査(nucleic acid amplification test; NAT)が導入された。1999年、日本赤十字 社はHCVHBVHIVの遺伝子を調べるNATセンターを設立した。全国で献血された血液は各地の血液センターでスクリーニングされた後、血清学的反応で陰性の血液すべてを東京(大田区)、京都(福知山)、北海道(千歳)のNATセンターで核酸レベルの検査を行っている。 献血後24時間以内に各血液センターに通知し、陽性血液は輸血用血液から除外して安全性を高めている。

 C型肝炎の治療は、病気の活動度や進行状態によって方法や効果が異なるため、治療薬や治療方針の選択については専門医による判断が必要である。最も有効性が確立している抗HCV薬はインターフェロン(IFN)である。1992年にIFN単独 24週療法にて著効率(SVR)10%程度であったが、200112月からリバビリンとの併用療法に医療保険が適用されるようになり、2004年のPEG-IFN製剤・RBV併用療法の導入により、著効率は50%となった。さらに201111月に国内承認された最初のプロテアーゼ阻害であるテラプレビルが使用可能となり、PEG-IFN+リバビリン+テラプレビルの3剤併用療法により、初回治療のSVR率は約70%と向上した。201311月には、第2世代プロテアーゼ阻害剤であるシメプレビルが認可され、シメプレビル+Peg-IFN +リバビリンの3剤併用療法により、初回治療のSVR 率は約90%まで向上した。現在、IFN freeであるプロ テアーゼ阻害剤/NS5A 阻害剤の内服剤による抗ウイルス療法などの臨床試験が進んでおり、こうした次世代 DAAs (direct anti-viral agents)は、副作用が非常に少なく、これまで以上の抗ウイルス効果が報告されており期待されている。

 予防法として最も有効と思われるC型肝炎ワクチンは、依然として実用化されていない。C型慢性肝炎患者の血液中には、HCV蛋白に対する様々な特異的抗体が産生されるものの、ゲノムの多様性やエンベロープ蛋白にアミノ酸が変異しやすい領域が存在することなどから、中和抗体は産生されにくい。また、感染に伴ってT細胞応答も惹起されるが、例えばB型肝炎などの場合と比べてウイルス特異的な細胞性免疫は誘導されにくいと考えられる。このようなことが要因となって、HCVは宿主の免疫監視機構から逃れ、高率に持続感染が成立するものと考えられている。

 

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