※PDF版よりピックアップして掲載しています。
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<速報>高槻市における2014(平成26)年2月の麻しんの発生状況と対応について

(掲載日 2014/3/25)

 

はじめに
本市は、大阪と京都の中間に位置する人口約36万人の都市であり、2003(平成15)年に中核市へ移行し、市保健所が設置された。保健所では、麻しんの発生届が提出されると、全例、大阪府立公衆衛生研究所(以下、公衛研)にPCR検査を依頼し、陰性の場合は医療機関に発生届の取り下げを依頼するなど、検査診断を徹底させてきた。結果、麻しんPCRが陽性となったのは、2009~2013(平成21~25)年の5年間で1件(平成24年)だけであった。この1件はヨーロッパからの輸入麻しん(成人女性)事例だったが、初発患者からの感染の拡がりはみられなかった。

初発患者の発生
2014(平成26)年に入り、全国で輸入麻しんの報告が多くなったため、本市でも警戒していたが、2月4日、総合病院小児科から臨床診断による麻しんの発生届が提出された。患者はMRワクチン未接種の4歳男児で、家族で海外に滞在し、1月17日に帰国していた。すでにカタル期は過ぎており、発疹と高熱が出現していた。病院では麻しん抗体の検査を実施していたが、保健所では直ちにEDTA血等を公衛研に搬送し、PCR検査を依頼した。2月7日、IgM 13.8、PCR陽性と判明、麻しんと検査診断された。

保健所の家族への初期対応
2月4日以降、医療機関および保健所は、患者家族に麻しんについて説明し、接触者の健康調査の必要性についての理解を得ていた。
 (1) 保健所では、直ちに患児の通っている保育所を訪問し、調査を開始した。患児はカタル症状が出る前に、喘息で保育所を休んでおり、保育所での感染拡大の可能性は少ないことが判明したが、念のため、麻しん患者発生のポスター掲示、および2週間の健康調査を依頼した。

 (2) 患者は感染可能期間中は外出等もしておらず、特に接触のある友人等もなかったが、2人の弟(2歳児と6カ月児)がMRワクチン未接種であるため、家族には近日中に発症する可能性が非常に高いことを説明し、受診の際には、事前に医療機関に電話連絡するように依頼した。

医療機関への依頼
医療機関には次の2点の協力依頼をした。
(1)麻しん感染の疑いの人が受診する際に動線を一般の患者と分ける。医療機関玄関に添付するポスターを配布し、患者が外から医療機関に電話をし、車で待機するよう指示した。

 (2) 初発患者が受診した医療機関には、受診時に待合室等に居合わせた患者に電話連絡し、事情を説明したうえで、ワクチン接種の有無を聞き合わせ、無しの場合は潜伏期が過ぎるまで外出等を控えることを説明するよう依頼した。

初発患児からの市内での感染拡大と終息
2月8日の時点で、患児の弟2人は、すでにカタル様症状を呈しており、早期に検査を行った。医療機関実施のIgM抗体はまだ陰性の段階であったが、公衛研に依頼したPCRが陽性と判明したため、2月10日に2名の発生届を収受した。

初発患者が受診した医療機関では、接触者リストを作成し対応しており、うち6名が発症したとして、発生届を提出した(2月15日~2月20日)。6名全員のPCR検査を実施したが、4名が陽性、2名が陰性であった。陰性の患者の発生届は取り下げとなった。また、2月15日に発生届の受理された患児の双生児の妹の感染が確認され、2月22日に発生届が提出された。患者の行動調査を徹底して行うなか、3名の疑わしい症例の発生が報告されたが、いずれも抗体検査またはPCR検査で麻しん感染は否定された。それをうけて、最後の感染可能接触日が2月14日となった。よって、潜伏期も考慮し、この一連の麻しん事例からの新たな発症は無いとして、3月11日に感染の終息と判断した。

PCR検査の結果、8例の陽性例はすべてB3型と判明している。

麻しん患者はの通りである(*8は4の双生児の妹であるが、2月15日~22日の間で月齢があがっている)。

高槻市の一般市民への対策
感染拡大時に、市民に広く感染防御の対策をする必要があると考え、また、8名の発症者が全員MRワクチン未接種者であったことを受け、次のような対策を行った。

(1)保育所等にポスターを配布したり、高槻市ホームページに掲載して、1期、2期のMRワクチン接種対象者は早急に受けるように広報した。担当課から1期対象者でまだ接種していない児に個別通知による接種勧奨をした。

(2)保育所・幼稚園等には、通所(園)児のワクチン接種歴、罹患歴を把握するよう依頼した。

(3)1期MRワクチン未接種幼児(満2歳~5歳)にワクチン接種を緊急に接種するために、緊急助成事業を立ち上げた。(期間は3月3日~31日、無料)対象児には個別通知をし、保育所・幼稚園等に接種勧奨の協力を依頼した。

考 察
(1) 医療機関での感染防止対策、保健師による発症者の行動調査および接触者の健康調査等を徹底して行うことで、早期に感染を終息に導くことができた。医療機関の協力が大きく影響した。

(2) 全国では、現在も麻しん発症の報告(輸入麻しんとそれに連なる国内感染)が続いている。1期MRワクチン未接種幼児に無料で予防接種を実施することで、抗体保有者を増加させ、乳幼児の感染を防ぐとともに、高槻市における集団免疫力を高めていけると考える。

 

高槻市保健所 
  中川直子 山下茂信 池田貴日止 山田由紀子 菅田幸子 森 めぐみ 村田美穂 
  岩村浩一 森定一稔 髙野正子
大阪府立公衆衛生研究所

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国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室

 

全国地方衛生研究所

 日本は世界最大の抗インフルエンザ薬使用国であり、薬剤耐性株の検出状況を迅速に把握し、自治体および医療機関に情報提供することは公衆衛生上重要である。そこで全国地方衛生研究所(地研)と国立感染症研究所(感染研)では、オセルタミビル(商品名タミフル)、ザナミビル(商品名リレンザ)、ペラミビル(商品名ラピアクタ)およびラニナミビル(商品名イナビル)に対する薬剤耐性株サーベイランスを実施している。

下記のグラフおよび表に、地研が遺伝子解析により耐性マーカーH275Yを検出した結果および感染研においてオセルタミビル、ザナミビル、ペラミビルおよびラニナミビルに対する薬剤感受性試験を行った結果の集計を示す。集計結果は毎週更新される。

2013/2014シーズン  (データ更新日:2014年3月24日)NEW

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表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
 

2012/2013シーズン  (データ更新日:2014年3月10日)

表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
 
2011/2012シーズン  (データ更新日:2013年4月11日)
表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
 
2010/2011シーズン  (データ更新日:2013年2月6日)
表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 検体採取週別
表4.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別
 
2009/2010シーズン  (データ更新日:2013年2月6日)
表1.抗インフルエンザ薬耐性株検出情報 [A(H1N1)pdm09, A(H3N2), B]
表2.抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09株検出情報 報告機関別
表3.抗インフルエンザ薬耐性A(H3N2), B型株検出情報 報告機関別

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<資料> チフス菌・パラチフスA菌のファージ型別成績
(2013年12月21日~2014年2月20日受理分)
(Vol. 35 p. 21: 2014年3月号)
国立感染症研究所細菌第一部第二室

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稀な血清型Agbeniが同定された3件のサルモネラ感染事例の解析―秋田県

(IASR Vol. 35 p. 80-81: 2014年3月号)

 

ヒト由来のサルモネラ検出数は、過去5年間EnteritidisおよびInfantisが常に1位、2位を占めてはいるものの、それ以外の血清型も多く確認されている(https://idsc.niid.go.jp/iasr/virus/bacteria-j.html)。今回、その中でも稀なサルモネラ血清型Agbeniの感染事例を3件確認したので報告する。

事例は、2013(平成25)年8月27日~9月11日にかけて確認され、患者は2歳男児、4歳女児、4カ月の乳児で、いずれも同じ市内に在住していた。分離された3株は市販の抗血清を用いた血清型別でO13群、H1抗原がg,  m, H2抗原は検出されなかった。血清型を特定するため、Statens Serum Institute の抗血清を用いてO13群の副抗原(O22、O23)の検出と、PCR法によるサルモネラ属菌および亜種Iの確認1)と各抗原遺伝子の確認2, 3)を行った(表1)。3株はいずれもO23 (+)、PCR法によりサルモネラ属菌特異的なinvA (+)、亜種I特異的なSTM4057 (+)、O13群 (+)、H1; g,m (+)、H2; 1-complexおよびH2;e,n-complexについてはともに(-)であることが確認された。以上の結果から、サルモネラ血清型Agbeni ( 1, 13, 23: g, m, [t]: -)と同定した。

また、Kirby-Bauer法による感受性試験を行ったところ、3株はいずれも供試したアンピシリン、ホスホマイシン、ノルフロキサシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールの6剤にはすべて感受性であった。

非常に稀な血清型が複数確認されたことから、PFGEにより菌のDNAパターンを比較したところ、NotIではいずれも同一、XbaIでは1株がバンド1本異なるのみで、事例間の関連性が疑われた(図1)。医療機関からの情報によると、初発の患者は直近にミドリガメを飼育し始めたとのことであり、感染源としてはこのミドリガメが強く疑われた。爬虫類を原因とする感染事例は国内外で散見され、特にミドリガメは子供のペットとして人気が高いが、そのサルモネラ汚染は高率で、様々な血清型のサルモネラの保菌が確認されている4)。2013(平成25)年8月12日には米国での感染事例の多発を受け厚生労働省から注意喚起を促す通知が出されている。秋田県でも今回の事例確認後、感染症週報に爬虫類に起因するサルモネラ症についてトピックスを掲載し、改めて注意喚起を行った。

血清型の同定は感染症の発生動向を知る上で非常に重要である。しかしながら、サルモネラの血清型は複雑で、複数回の培養が必要なため時間を要する。今回PCR法による型別を行ったところ、従来の血清型別法と一致した結果が得られた。PCR法は、複数の抗原遺伝子を同時に検出できるため、迅速に血清型を推定することが可能と思われる。また、今回の事例のように稀な血清型が同定された場合は、従来の血清型別法と組み合わせることでより正確な血清型の同定に役立つと考えられた。

 

参考文献
1) Lee, et al., Appli Microbio 107: 805-811, 2009
2) Franklin, et al., J Clin Microbiol 49: 2954-2965, 2011
3) Maurer, et al., J Vis Exp 21: 1-6, 2011
4) 黒木俊郎, 他, IASR 30: 212-213, 2009

 

秋田県健康環境センター保健衛生部 
  今野貴之 髙橋志保 熊谷優子 樫尾拓子 和田恵理子 村山力則 八柳 潤 齊藤志保子

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日本のHIV感染者・AIDS患者の状況
(平成25年9月30日~12月29日)

(Vol. 35 p. 82-84 : 2014年3月号)

平成26年2月28日
厚生労働省健康局疾病対策課
第136回エイズ動向委員会委員長コメント
 
《平成25年第4四半期》

 【概要】

1.今回の報告期間は平成25年9月30日~平成25年12月29日までの約3か月
2.新規HIV感染者報告数は295件(前回報告261件、 前年同時期257件)。そのうち男性282件、女性13件で、男性は前回(251件)および前年同時期(246件)より増加、女性は前回(10件)および前年同時期(11件)より増加
3.新規AIDS患者報告数は108件(前回報告108件、前年同時期114件)。そのうち男性101件、女性7件で、男性は前回(102件)および前年同時期(107件)より減少、女性は前回(6件)より増加、前年同時期(7件)と同数
4.HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は403件

【感染経路・年齢等の動向】

1.新規HIV感染者:
 ○同性間性的接触によるものが205件(全HIV感染者報告数の約69%)
 ○異性間性的接触によるものが51件(全HIV感染者報告数の約17%)。そのうち男性42件、女性9件
 ○静注薬物によるものは2件(うち、その他に計上されているものが1件)
 ○年齢別では、 20~30代が多い。
2.新規AIDS患者:
 ○同性間性的接触によるものが59件(全AIDS患者報告数の約55%)
 ○異性間性的接触によるものが25件(全AIDS患者報告数の約23%)。そのうち男性21件、女性4件
 ○静注薬物によるものは3件
 ○年齢別では、30~40代が多い。

【検査・相談件数の概況(平成25年10月~12月)】

1.保健所におけるHIV抗体検査件数(確定値)は34,161件(前回報告24,533件、前年同時期26,597件)、
自治体が実施する保健所以外の検査件数(確定値)は8,916件(前回報告7,310件、前年同時期7,223件)

2.保健所等における相談件数(確定値)は43,077件(前回報告31,843件、前年同時期33,820件)

【献血の概況(平成25年1月~12月)】

1.献血件数(速報値)は、5,205,819件(前年同時期速報値5,271,103件)

2.そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数(速報値)は63件(前年同時期速報値68件)。10 万件当たりの陽性件数(速報値)は、1.210件(前年同時期速報値1.290件)

《まとめ》

1.前回に比し、新規HIV感染者報告数は増加し、新規AIDS患者報告数は横ばいであった。

2.前回および前年同時期に比し、保健所等におけるHIV抗体検査件数、相談件数ともに大幅に増加した。
 検査・相談件数増加要因としては、12月1日の世界エイズデーにあわせた各自治体のイベント検査による増加、輸血によるHIV感染報道の影響が考えられる。

 3.早期発見は個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつくので、今後も保健所等の無料・匿名HIV抗体検査および相談を積極的に利用していただきたい。

《平成25年 年間報告(速報値)》
【概要】
1.今回の報告期間は平成24年12月31日~平成25 年12月29日までの約1年(四半期ごと速報値の合計)
2.新規HIV感染者報告数は1,077件で過去3位
3.新規AIDS患者報告数は469件で過去2位
4.HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は1,546件で過去2位
※これまでの最高は、平成20年(確定値)でHIV感染者は、1,126件、AIDS患者431件、合計1,557件。
 
【感染経路・年齢等の動向(速報値)】

1.新規HIV感染者:
 ○同性間性的接触によるものが760件(全HIV感染者報告数の約71%)
 ○異性間性的接触によるものが189件(全HIV感染者報告数の約18%)
 ○静注薬物によるものは7件(うち、その他に計上されているものが6件)
   ○母子感染によるものは1件
 ○年齢別では、特に20~30代が多い 。

2.新規AIDS患者:
 ○同性間性的接触によるものが268件(全AIDS患者報告数の約57%)
 ○異性間性的接触によるものが110件(全AIDS患者報告数の約23%)
 ○静注薬物によるものは7件(うち、その他に計上されているものが4件)
 ○母子感染によるものは0件
 ○年齢別では、特に30歳以上が多い。なお、40歳以上が約63%を占めている。
 

【検査・相談件数の概況(平成25年1月~12月)】

1.保健所等におけるHIV抗体検査件数(確定値)は136,400件で過去4位(過去最高は平成20年177,156件) 
2.保健所等における相談件数(確定値)は145,401件で過去10位 (過去最高は平成20年230,091件)

《まとめ》

1.平成25年は速報値ではあるが、ここ数年間、新規HIV感染者と新規AIDS患者を合わせて約1,500件の報告があり、横ばい傾向のまま高止まりしている。

2.年齢別の新規HIV感染者報告数は、特に20~30代で多く、感染経路として同性間性的接触の割合が最も高い。

3.新規HIV感染者および新規AIDS患者報告数の合計は、ここ7年間で1万件以上報告されており、累積では、22,971件の報告がある。

4.検査を受け、早期に治療を始めることでAIDSの発症を防ぐことが出来る。新規AIDS患者報告例の年齢ピークが30代から40代へと上昇傾向を示し、40歳以上が約63%を占めている。また、新規HIV感染者・新規AIDS患者報告数に占める新規AIDS患者報告数の割合は依然として30%を超えたまま推移している。以上から、検査は未だ十分行き届いていないと考えられる。

5.平成22年以降、保健所等におけるHIV抗体検査件数はゆるやかではあるが増加傾向を示しているものの、相談件数は減少傾向を示しており、社会のHIVへの関心の低下が懸念される。

6.速報値ではあるが、献血における10万件当たりの陽性件数は減少傾向であった。

7.国民の皆様には、積極的にHIV検査を受けていただきたい。自治体におかれては、エイズ予防指針を踏まえ、引き続き利便性に配慮した検査相談体制を推進していただきたい。

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan