国立感染症研究所

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シメサバ寿司におけるアニサキスの寄生状況調査

(IASR Vol. 38 p.72: 2017年4月号)

食中毒統計によると, 2013~2015年までのアニサキス食中毒の届出数は294件(301人)で, 原因食品として特定された魚種としてはサバが最も多い(62人)。しかもサバは刺身としてだけではなく, むしろ加工品としてのシメサバを原因とする食中毒事例の報告が目立つ。そこで2016年4月~7月に都内の回転寿司店(3店舗)でシメサバ寿司72検体を購入し, アニサキス幼虫の寄生状況を調べた。まず寿司ネタのシメサバを個別にガラス板で圧平し, アニサキス幼虫の検出に努めた。幼虫が検出された場合は, これを摘出して実体顕微鏡下で観察し, 食道の形態から型別を判定した。

 その結果, 自家製のシメサバを用いていた1店舗では, 40検体中の7検体がアニサキス陽性で, 合計14隻(せき)のアニサキス幼虫が検出され, いずれもI型と判定された(1検体の平均検出数は2隻)。このうち3隻は運動性も認められた。なお, 検出されたアニサキスI型幼虫14隻はいずれもAnisakis simplex sensu strictoと分子同定された(ヒト症例の主要原因種)。自家製のシメサバは, アニサキス食中毒の原因として十分に注意する必要がある。

残りの2店舗(32検体)のシメサバ寿司はアニサキス陰性であった。これらはいずれも市販の加工品を用いて調理・提供された寿司であった。市販の加工品はサバの半身を酢で処理して真空パックした後, 販売されるまで冷凍で保存されるという。アニサキス幼虫は, -20℃以下, 24時間以上の冷凍処理で感染性を失うので, アニサキスが検出されても, 加工品はアニサキス食中毒に対する安全性が確保されていると考えられた。

 

日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科獣医寄生虫学教室
 常盤俊大 池 和憲

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