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抗SFTSウイルス薬開発の進捗状況

(IASR Vol. 40 p120-121:2019年7月号)

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対して承認された抗ウイルス薬はない。抗インフルエンザ薬として承認されているファビピラビルが培養細胞においてSFTSウイルス(SFTSV)の増殖を阻害し, 感染初期に投与することによりマウスの死亡率を低下させたことが報告されており1), SFTS患者での臨床研究や治験が取り組まれている(本号11ページ)。幅広い抗ウイルス活性で知られるリバビリンはSFTSの治療に無効であったことが以前報告されていたが2), ある一定のレベルより低い血液中ウイルス量を示す患者では, リバビリン投与により致命率が5分の1程度に減少したことが最近報告された3)

SFTSVと同じブニヤウイルス目に属するクリミア・コンゴ出血熱ウイルスの遺伝子を用いたhigh-throughput screeningにより, リバビリンと比べ200分の1の濃度でウイルスの増殖阻害効果を示す分子が同定された4)。この分子はファビピラビルと同様の核酸アナログで, 培養細胞を用いた試験ではSFTSVに対し強い増殖抑制効果を示したが, マウスを用いた試験ではその防御効果はファビピラビル以下であった5)。米国食品医薬品局(FDA)承認薬等の低分子化合物ライブラリーからSFTSVの増殖を抑制する化合物を探索する研究も行われている。

SFTSの回復者から得られた血漿を別の患者の治療に用いた症例報告があるが6,7), いずれも投与時期が遅いこともあり血漿投与の治療効果は明らかではない。マウスを用いた試験で患者由来の血清や単クローン抗体の治療効果が示されているが8,9), 抗体医薬品の製造コストの課題も残されている。

 

参考文献
  1. Tani H, et al., mSphere, 1: e00061-15, 2016
  2. Liu W et al., Clin Infect Dis 57: 1292-1299, 2013
  3. Li H, et al., Lancet Infect Dis 18: 1127-1137, 2018
  4. Welch SR, et al., Antiviral Res 147: 91-99, 2017
  5. Smee DF, et al., Antiviral Res 160: 48-54, 2018
  6. Park SY, et al., Emerg Infect Dis 22: 1306-1308, 2016
  7. Choi S, et al., Am J Trop Med Hyg 99: 1466-1468, 2018
  8. Shimada S, et al., Virology 482: 19-27, 2015
  9. Kim KH, et al., PLoS Pathog, 15: e1007375, 2019

 

国立感染症研究所ウイルス第一部
 黒須 剛 下島昌幸

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