国立感染症研究所

国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年12月14日)

 

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症は、2014年9月19日より感染症法に基づく5類全数把握対象疾患となった。届出対象はCREによる感染症を発症した患者であり、保菌者は対象外である(届出基準、届出票についてはhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-140912-1.html参照)。なお、感染症法に基づく届出の基準として示されたCREの判定基準値は病院で用いられている判定基準値と異なることがある(文末参考)。

2023年2月3日現在、2021年第1週~第52週(2021年1月4日~2022年1月2日)にCRE感染症と診断され、報告された症例は2,066例であり(図1)、うち届出時点の死亡例は49例(2%)であった。報告数は、2019年は2,333例と過去最多であったが、2020年は1,956例へ減少し、2021年は2,066例であった。

男性が1,292例(63%)、診断時の年齢中央値は77歳(四分位範囲 68-85)、70歳以上の症例は1,493例(72%)であった。診断名は、尿路感染症 696例(34%)、菌血症・敗血症 519例(25%)、肺炎406例(20%)の順に多かった(表1)。菌が分離された検体は、尿613例(30%)、血液579例(28%)、喀痰 368例(18%)の順に多かった(表2)。2019年から2021年の3年間において、診断名および菌が分離された検体の内訳は同様の傾向であった。分離された菌種は、Klebsiella aerogenes 800例(39%)、Enterobacter cloacae 514例(25%)、Klebsiella pneumoniae 215例(10%)、Escherichia coli 128例(6%)の順に多く報告された(表3)。これらの4菌種が多く報告される傾向は、2019年から2021年の3年間で同様であった。薬剤耐性の確認に用いた薬剤名の記載があったのは1,992例(96%)で、メロペネムの基準のみが432例 (22%)、イミペネムかつセフメタゾールが1,037例 (52%)、両方が記載されていたものが523例(26%)だった。2021年は、全ての都道府県から報告があり、東京都 (208例)、大阪府(186例)、愛知県(160例)の順に多く報告されていた。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和5年厚生労働省令第79号)により、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症からカルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症へ名称変更 (https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001101196.pdf

診断名は症状として報告された情報を用い集計した

 

図1. CRE感染症の年別報告数、2014年*-2021年

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表1.CRE感染症症例の診断名(重複あり)、2019年-2021年

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表2.CRE感染症症例の菌が分離された検体(重複あり)、2019年-2021年

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    表3.CRE感染症症例の分離菌種(重複あり)、2019年-2021年

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参考 感染症法の届出及び米国Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) 2012における微量液体希釈法判定基準値

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