国立感染症研究所

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)による院内感染事例について

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カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)による院内感染事例について

(IASR Vol. 38 p.229-230: 2017年11月号)

千葉市内の医療機関においてカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)の院内感染が発生し, 分離菌株の遺伝学的解析を行ったので, 概要を報告する。

感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出状況、2016年

国立感染症研究所
2017年6月13日現在
(掲載日 2017月7月14日)

2014年9月19日よりカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症が感染症法に基づく5類全数把握対象疾患となり、CRE感染症発症患者が報告されるようになった。

2017年6月13日現在、2016年第1週(2016年1月4日)~第52週(2017年1月1日)の期間にCRE感染症は1,581例の届出があり、うち届出時の死亡例は53(3.4%)であった。

感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出状況(2015年1~12月)

 

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感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出状況(2015年1~12月)

(掲載日 2016/09/06)

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症は、メロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示すEscherichia coliKlebsiella pneumoniaeなどの腸内細菌科細菌による感染症の総称である。広域β-ラクタム剤以外にも他の複数の系統の薬剤にも耐性であることが多いこと、カルバペネム耐性遺伝子がプラスミドの伝達により複数の菌種に拡散していくことなどにより臨床的にも疫学的にも重要な薬剤耐性菌として、国際的に警戒感が高まっている。日本では、2014年9月19日より感染症法に基づく感染症発生動向調査における5類全数把握疾患となった。本稿では、2015年第1週(1月1日)~第53週(2016年1月3日)の報告例について述べる(2016年1月8日現在)。

感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出状況、2014年9月~2015年8月

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感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出状況、2014年9月~2015年8月

(IASR Vol. 37 p. 15-16: 2016年1月号)

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症は、メロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す大腸菌Escherichia coliE. coli)や肺炎桿菌Klebsiella pneumoniaeK. pneumoniae)などの腸内細菌科細菌による感染症の総称である。広域β-ラクタム剤以外にも他の複数の系統の薬剤にも耐性であることが多いこと、カルバペネム耐性遺伝子がプラスミドの伝達により複数の菌種に拡散していくことなどにより臨床的にも疫学的にも重要な薬剤耐性菌として、国際的に警戒感が高まっている。日本では、2014年9月19日より感染症法に基づく感染症発生動向調査における5類全数把握疾患となった。本稿では、2014年第38週(9月19日)~2015年第35週(8月30日)までの約1年間の届出状況について報告する。

上記期間に計1,321例の届出があり、男性が822例(62%)であった。診断時の年齢中央値は76歳(範囲0-101歳)で、65歳以上が1,020例(77%)を占めた。届出時点での死亡例は1,321例中52例であった。死亡例の性別は男性が33例、診断時の年齢中央値は78歳(範囲41-101歳)で、母集団の分布と概ね同様であった。

診断から報告までの日数の中央値は1日(範囲0-133日)で、1,107例(84%)は診断から1週間以内に報告されていた。都道府県別では東京都が202例と最も多く、次いで大阪府157例で、すべての都道府県から報告があった。

IASR 35(12), 2014【特集】カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症

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The topic of This Month Vol.35 No.12(No.418)

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症

(IASR Vol. 35 p. 281- 282: 2014年12月号)

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症は、グラム陰性菌による感染症の治療において最も重要な抗菌薬であるメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌科細菌による感染症の総称である。CREは主に感染防御機能の低下した患者や外科手術後の患者、抗菌薬を長期にわたって使用している患者などに感染症を起こす。健常者に感染症を起こすこともある。いずれも肺炎などの呼吸器感染症、尿路感染症、手術部位や軟部組織の感染症、医療器具関連血流感染症、敗血症、髄膜炎、その他多様な感染症を起こし、しばしば、院内感染の原因となる。

<速報>大阪市内大規模病院におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の長期間にわたる院内伝播

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<速報>大阪市内大規模病院におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の長期間にわたる院内伝播

(掲載日 2014/12/2)(IASR Vol. 35 p. 290- 291: 2014年12月号)

2010年7月に国立病院機構大阪医療センターにおいてカルバペネムを含む複数の抗菌薬に耐性を示すメタロ-β-ラクタマーゼ(Metallo-β-lactamase: MBL)産生腸内細菌科細菌(MBL-Ent)のKlebsiella pneumoniaeが分離され、その後も複数の診療科、病棟、種々の検体から複数菌種のMBL-Entが分離された1)。病院の対策にもかかわらず新規症例の発生が続いたため、報告を受けた大阪市保健所が国立感染症研究所(感染研)とともに2014年2月21日より実地疫学調査を行った。

感染症法に基づくカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の届出に関するQ&A

2014年9月24日

平成26年9月19日に、感染症法に基づく医師の届出対象の感染症に、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が追加されました。届出にあたり、よくある質問とその答えをまとめました。

 


 

Q1: カルバペネムに耐性を示す腸内細菌科細菌が分離されましたが、感染症を起こしていない保菌者については、届出の対象ですか?
A1: 届出の対象ではありません。ただし、複数の入院患者からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌が分離されるなど、院内でのアウトブレイクが疑われる場合は、保菌であっても別途医政局指導課長通知(平成23年6月17日:医政指発0617第1号)に基づき、保健所に相談、連絡をしてください。また、その菌株が入院中の患者より分離された場合は、他の入院患者へ伝播しないように院内感染対策を適切に実施することが必要です。

海外帰国患者よりカルバペネム耐性肺炎桿菌、多剤耐性アシネトバクターおよびVREが同時に検出された事例に関する報告

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海外帰国患者よりカルバペネム耐性肺炎桿菌、多剤耐性アシネトバクターおよびVREが同時に検出された事例に関する報告

(IASR Vol. 35 p. 200-201: 2014年8月号)

多剤耐性アシネトバクターやCRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)などの新型のグラム陰性多剤耐性菌が広がっている欧州の1国を旅行していた女性(65歳)が、脳出血のため現地で入院。入院中に呼吸停止となり人工呼吸器を装着し肺炎を併発した。15日間の治療ののち日本での治療を希望して帰国し、2014(平成26)年5月某日に名古屋市内の基幹的総合病院に入院した。重症肺炎と診断され、人工呼吸管理下でPIPC/TAZ、DRPM+VCMにより治療を行ったが、肺炎による呼吸不全のため入院10日目に死亡した。

起炎菌の検索のため実施した培養検査の結果、血液よりバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、喀痰よりVRE、Acinetobacter baumanniiKlebsiella pneumoniae が検出され、同病院の細菌検査室でいずれも多剤耐性株と判定された。

厚生労働省が推進する地域連携の一環として名古屋大学において、分離菌の詳しい解析を実施した。その結果、VREはVanB型、多剤耐性Acinetobacter は、A. baumannii の国際流行クローンI型(IC I)であり、かつ獲得型のOXA-23-like型カルバペネマーゼの遺伝子陽性株、さらに多剤耐性K. pneumoniae は、KPC型カルバペネマーゼ産生株と判定された。

これらの3種類の多剤耐性菌の早期検出に成功した当該基幹病院では、名古屋大学中央感染制御部とも連携し、医療環境のスクリーニング検査や接触者の保菌検査等を行い、2名のカルバペネム耐性A. baumannii 、3名のカルバペネム耐性K. pneumoniae の保菌者、さらに院内数カ所のA. baumannii による環境汚染を特定した上で、環境整備とともに、保菌者を含めた隔離と移動制限、スタッフのコホーティングを含めた厳重な接触予防策の徹底を図ったところ、2014年6月25日時点で、これらの耐性菌の院内伝播の阻止に成功している。

用語の解説 A. baumannii の「国際流行クローンI型」は、最近では「international clone I (IC I)」と表記され、2000年代初期に「European clone 1」とか「pan-European clone 1」などとも呼ばれていたものと同等である。同様に、「国際流行クローンII型」は、以前は、「European clone 2」とか「pan-European clone 2」、最近では「international clone II(IC II)」と表記される。Pasteur研究所のMLST解析法1)では、IC Iはsequence type 1(ST1)、IC IIはST2と判定され、BartualらのMLST解析法2)では、それぞれ、clonal complex 109 (CC109)、CC92と判定される。多剤耐性Acinetobacter としては、海外ではA. baumannii のIC IIが主流であるが、今回分離されたIC Iも欧州等で広く流行しており、2000年代前半から中期にかけて、イラクの米軍等の傷病兵で流行した多剤耐性Acinetobacter の中にもIC Iが含まれていた3)。また、多剤耐性Acinetobacter については、既に国内で数件のアウトブレイク事例が確認されている。なお、A. baumannii は、ほぼ例外なく染色体上に生来OXA-51-like型カルバペネマーゼの遺伝子を保有しているため、今回の分離株は、OXA-51-like型とOXA-23-like型の2種類のカルバペネマーゼの遺伝子を保持しているやや稀な株であった。

KPC型カルバペネマーゼを産生するカルバペネム耐性K. pneumoniae については、2013年3月に米国CDCが、全米に対し警告を発している4)が、この種のCREは、米国のみならず、数年前から欧州各地、さらに世界中に広がりつつあり、感染制御の対象耐性菌の一つとして強く警戒されている。KPC型カルバペネマーゼ産生K. pneumoniaeについては、国内ではこれまでに数件が確認されているが、多くは海外からの帰国患者等より検出された株であり、これまでのところ国内では大規模なアウトブレイクは発生していない。

参考情報:2011(平成23)年6月17日付けで、厚生労働省医政局指導課より、「医療機関等における院内感染対策について」が発出されているが、2014(平成26)年6月23日付けで、新たに「医療機関等において多剤耐性菌によるアウトブレイクを疑う基準について」の事務連絡が発出されたので、CRE等多剤耐性菌のアウトブレイクが発生した際にはそれらに従い対処していただく必要があります。

 

参考文献
  1. http://www.pasteur.fr/recherche/genopole/PF8/mlst/Abaumannii.html
  2. Bartual SG, et al., J Clin Microbiol 43: 4382-4390, 2005
  3. Huang XZ, et al., Epidemiol Infect 140: 2302-2307, 2012
  4. http://www.cdc.gov/hai/organisms/ cre/

名古屋大学大学院医学系研究科分子病原細菌学/耐性菌制御学分野         
  和知野 純一 荒川 宜親
名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部
  冨田 ゆうか 八木 哲也

 

最終更新日 2016年9月06日(火曜)15:33

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カルバペネム耐性腸内細菌に関する米国CDCの発表と、日本国内の状況について

米疾病対策予防センター(CDC)は35日、米国で抗菌薬の切り札とされるカルバペネム系抗生物質に耐性を持つ腸内細菌科の細菌(Carbapenem-Resistant EnterobacteriaceaeCRE)による感染症が増えており、早急な対応が必要であると発表しました。

http://www.cdc.gov/media/releases/2013/p0305_deadly_bacteria.html

http://www.cdc.gov/vitalsigns/HAI/CRE/

http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6209a3.htm?s_cid=mm6209a3_w

 発表によると、過去10年間でカルバペネム耐性の腸内細菌科の細菌が1.2%から4.2%に、特にKlebsiella pneumoniaeに限ると1.6%から10.4%へ増加しました。また2012年上半期で 全米の病院の4%、長期急性期病院の18%でカルバペネム耐性腸内細菌科の細菌による感染症が発生しました。

 

 日本国内においては、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業がカルバペネムやその他の耐性菌の動向を把握し、以下のサイトで情報を公開しています。

http://www.nih-janis.jp

 2011年は、大腸菌のイミペネム耐性は0.1%K. pneumoniaeでは0.2%でした。

 米国では、カルバペネム耐性菌はKPC型カルバペネマーゼを産生する菌が中心ですが、日本においてはIMP型カルバペネマーゼを産生する菌が多く、KPC型は現在のところ稀です。

http://www.niid.go.jp/niid/ja/drug-resistance-bacteria-m/drug-resistance-bacteria-iasrd/3096-kj3952.html

 日本においてカルバペネム耐性の腸内細菌科の菌は少なくとも米国ほど拡散していませんが、このような耐性菌は治療に困難を来すことから、医療機関においては引き続き注意が必要です。腸内細菌科に属する菌種でカルバペネム耐性を示す菌が分離された場合は、近隣の連携病院、大学附属病院、自治体などにご相談いただくか、国立感染症研究所細菌第二部(This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.)に解析を依頼することが出来ます。

 

<参考>米国CDCが警告を発したカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)に関するQ&A

 

文責: 柴山恵吾 (国立感染症研究所 細菌第二部)  

最終更新日 2016年9月06日(火曜)15:33

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米国CDCが警告を発したカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)に関するQ&A

<一般向け>

Q1CREとは何の略ですか?

A1CREとは、「Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae」の略で、最後の切り札的抗菌薬であるイミペネムやメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬に対し耐性を獲得した、肺炎桿菌や大腸菌、さらにその仲間の腸内細菌科に属する細菌のことです。

 

Q2CREはなぜ問題なのですか?

A2CREは、カルバペネム系抗菌薬を含む多くの広域β-ラクタム系薬に対し耐性を獲得しているのみならず、他の系統の、例えばフルオロキノロン系やアミノグリコシド系の薬剤にも多剤耐性を獲得していることが多く、感染症を引き起こすと治療が難しくなるからです。また、CREの菌種はもともと腸内に棲息しやすい菌種であるため、ヒトの腸内に長く定着する性質を持ちます。

 

Q3CREはどんな病気を引き起こすのですか?

A3CREは、肺炎桿菌や大腸菌が多く、その他、その仲間の細菌です。したがって、肺炎や尿路感染症などの原因となる場合が多いです。また、手術後の患者さんでは、創部の感染症や腹膜炎、膿瘍などの原因になることもあります。さらに、血液中に侵入し敗血症などを引き起すと、重篤化することが多く、米国では半数が死亡したと言われ、警戒されています。

 

Q4CREについて、日常的に注意することはありますか?

A4:健康な日常生活を送っている方々では、CREを過度に心配する必要はありません。海外で医療行為を受けたり、海外旅行から帰った後、体調不良等で医療機関を受診した場合は、海外に出かけていたことを、医師に告げて頂く必要はあります。海外では、CRE以外にもそれぞれの地域で流行や土着しているいろいろな病原体に感染する可能性があるからです。

 

Q5:万一、家族にCREが感染していると言われた場合には、どうしたら良いのですか?

A5:健康な日常生活を送っているご家族の方々には、CREはほぼ無害なので、過度な心配はいりません。しかし、お医者さんで抗生物質等を処方してもらい服用している方の場合には、CREが感染して増えることもあるので、その旨、医師に相談して下さい。また、CREが検出される患者さんの喀痰や便などの処置や処理の際には、手袋を用い、終了後には、石けんで手指を洗えば問題ありません。

<医療関係者向け>

Q1CREには、どのような菌種が含まれるのですか?

A1CREには、菌種としては、肺炎桿菌や大腸菌が主流を占めていますが、その他、肺炎桿菌の仲間であるKlebsiella oxytoca、点滴の汚染で問題となることがあるSerratia属菌、Enterobacter属菌、さらにCitrobacter属菌などがあります。また、現時点では稀ですが途上国等では、Salmonella属菌やShigella属菌のカルバペネム耐性株も検出されている事例もあります。

 

Q2CREが産生するカルバペネマーゼには、どのような種類があるのですか?

A2:これまでに、3つのグループが知られています。日本も含め世界中に広がっているのは、IMP型やVIM型、NDM型などのメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)のグループです。米国や欧州で広がっているのは、KPC型と呼ばれるものです。一方、欧州で急激に広がっているものとしては、OXA-48などと呼ばれる新型カルバペネマーゼを産生するCREもあります。

 

Q3:なぜ、CDCCREに対する警告を発したのですか?

A3CDCの警告文書には、米国では、この10年間に、カルバペネム耐性のKlebsiellaが7倍、腸内細菌科の菌種全般では、4倍に増えていると記載されています。引用されているMMWRによると、Klebsiella1.6%から10.4%へ、腸内細菌科の菌種全般では1.2%から4.2%と、急増しています。また、CREはグラム陰性菌のため、エンドトキシンを産生し、血液中に侵入して敗血症等を起こした場合、エンドトキシンショックや多臓器不全を誘発し、患者さんの症状の重篤化、予後の悪化に繋がり、半数が死亡すると警戒されています。米国では、これまで、KPC型カルバペネマーゼ産生菌が多い傾向がみられましたが、最近、コロラド州の病院で、NDM-1を産生するCREのアウトブレイクが発生し、また、欧州で広がっているOXA-48を産生する新型のCREも最近新たに検出されているため、CREに対する注意喚起を行ったものと思われます。

 

Q4:米国以外ではCREの状況はどのようですか?

A4:欧州では、VIM型やNDM型のMBL産生株とともに、KPC型、さらに、OXA-48の産生株も広がっており、各地でアウトブレイクも報告されるなど、米国よりある意味で深刻な状況に陥っています。また、インドやトルコ、ギリシャさらにその近隣のアジアや中東諸国などでも、CREが広がっており、警戒されています。また、イスラエルや中国の上海、香港、その近くの浙江省や江蘇省などでKPC型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌等が増えています。

 

Q5CREを早期に検出するにはどうしたら良いのですか?

A5:細菌検査室で日常的に実施されている薬剤感受性試験では、CREに対しては、イミペネムなどのカルバペネムのMICが必ずしも「R」とならない場合もあり、カルバペネム耐性を目安にしていると、見落とす危険性があります。多くの広域β-ラクタム系薬、特にセファロスポリン系薬に耐性を示し、ESBLの阻害剤であるクラブラン酸やSMAなどのメタロ-β-ラクタマーゼ阻害薬の存在で、耐性度が変化しない株については、カルバペネムの分解活性を確認するため、変法ホッジテストを実施すると検出できる場合があります。この場合、メロペネムを含むdiskを用いると感度が高くなると言われています。また、KPC型カルバペネマーゼ産生株では、3-アミノフェニルボロン酸により阻害活性が観察されますが、AmpC産生株との鑑別が必要になります。CREが疑われる株に対しては、PCRによる遺伝子検出が最も確実です。

 

Q6CREを保菌したり感染症を発症している患者さんに対してはどうしたら良いですか?

A6:院内伝播を食い止める為の対策は、MRSAや多剤耐性緑膿菌などに対する感染制御の手法と基本的には同じです。しかし、MRSAや多剤耐性緑膿菌では、便の培養検査はあまりしませんが、CREは肺炎桿菌や大腸菌等の腸内に棲息しやすい菌種のため、喀痰や膿、尿などの検査とともに、必要に応じて、便の検査、さらに陰部の拭き取り検査などを実施することで、保菌者を早期に発見、特定することができるようです。CREが検出されたら、他の多剤耐性菌(MDRO)と同様に標準予防策とともに接触感染予防策の徹底など、院内伝播の防止策を強化することが必要です。

 なお、CREによる感染症を発症している患者さんの治療法としては、定まった指針やガイドラインはありません。患者さんの病態と薬剤感受性試験の結果などを考慮し、臨機応変な対応をして頂くことになります。しかし、CREによる感染症を発症していない保菌患者さんに、除菌のため抗菌薬を投与することは推奨されていません。無用な抗菌薬投与は、逆にCREを増やしてしまう危険性があります。

 

Q7CREが検出されたら、保健所に届け出をするのですか?

A7平成26年9月19日に、感染症法に基づく医師の届出対象の感染症にカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が追加されました。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌による感染症患者が発生した場合、診断した医師は届出をする必要があります。届出基準などの詳細は、厚生労働省のホームページを参照してください。

この届出基準では、感染症を起こしていない保菌者については、届出の対象としていません。しかし、複数の入院患者からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌が分離されるなど、院内でのアウトブレイクが疑われる場合は、保菌であっても別途医政局指導課長通知(平成23年6月17日:医政指発0617第1号)に基づき、保健所に相談、連絡をしてください。

 

参考資料(平成23617日:医政指発06171号抜粋)

医療機関内での院内感染対策を講じた後、同一医療機関内で同一菌種による感染症の発病症例(上記の4菌種は保菌者を含む)が多数にのぼる場合(目安として10名以上となった場合)または当該院内感染事案との因果関係が否定できない死亡者が確認された場合においては、管轄する保健所に速やかに報告すること。また、このような場合に至らない時点においても、医療機関の判断の下、必要に応じて保健所に連絡・相談することが望ましいこと。

{注:「上記の4菌種」とは、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii}

 

国内外の薬剤耐性菌の最新情報については、以下のHPより、随時提供されています。

http://www.nih-janis.jp

http://yakutai.dept.med.gunma-u.ac.jp/society/index.html

 

文責:荒川宜親 (名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学/耐性菌制御学)

柴山恵吾 (国立感染症研究所 細菌第二部)  

最終更新日 2016年9月06日(火曜)15:33

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