(Vol. 33 p. 67: 2012年3月号)
MDCK細胞を用いてウイルス分離を行ったところ、5検体ともに初代培養4日でCPEが観察された。このウイルス培養上清の0.5%ニワトリ赤血球でのHA価は256~512であった。国立感染症研究所(感染研)から配布された2011/12シーズンインフルエンザサーベイランスキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した結果、分離されたウイルス株は抗B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)血清 (ホモHI価2,560) に対して、640のHI価を示した。その他、抗B/Bangladesh/3333/2007(山形系統)血清(同1,280) 、抗A/California/07/2009(AH1pdm09)血清(同1,280)、抗A/Victoria/210/2009(H3N2)血清 (同1,280) に対してはHI価が10未満であった。
HA遺伝子の系統樹解析では、感染研のプライマー情報に基づいてウイルス遺伝子のHA1領域の塩基配列を決定したところ、今回分離した5株すべての塩基配列が一致した。また、塩基配列から今回の分離株はN75K、N165K、S172Pのアミノ酸置換を持つB/Brisbane/60/2008株に代表されるBrisbane/60クレードに属し、L58Pのアミノ酸置換のあるグループ1に属していた。さらに、これらの株ではE198Gのアミノ酸置換が認められた。今シーズンに県内で分離された他の3株もBrisbane/60クレードのグループ1に属していたが、これらはE198Gのアミノ酸置換がなく、T182Aのアミノ酸置換を持つ点で今回の分離株とは異なっていた。
今シーズンに当所で検出あるいは分離したインフルエンザウイルス(2012年2月7日現在)は、90%(76/84)がAH3亜型で、10% (8/84) がB型であったが、B型の検出率が増えていることもあり、今後とも引き続き発生動向について注視していく必要がある。
兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研究センター
押部智宏 榎本美貴 髙井伝仕 近平雅嗣
赤穂健康福祉事務所 山下勝也 冨井智重 水野美枝子 安元兆
赤穂市民病院診療部長兼小児科部長 白石英幸
赤穂はくほう会病院小児科医長 一ノ瀬洋次郎