国立感染症研究所

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2013/14シーズン最初に分離・検出されたインフルエンザウイルス―栃木県

(IASR Vol. 34 p. 374-375: 2013年12月号)

 

2013年10月2日に栃木県県北保健所管内の病原体定点医療機関から今シーズン最初のインフルエンザ患者由来検体が栃木県保健環境センターに搬入された。これらの検体についてインフルエンザウイルス分離・検出状況および県内流行状況について概要を報告する。
 
2013年10月2日(第40週)に栃木県感染症発生動向調査事業に基づき、病原体定点医療機関からインフルエンザウイルス検体が6検体搬入された。その後、10月10日(第41週)にも同じ医療機関から9検体のインフルエンザウイルス検体の搬入があった(図1)。これらの検体はすべて県北保健所管内の患者(7~12歳)から採取された検体であり、県北地域における限定的な小流行が確認された。
 
搬入された15検体(咽頭ぬぐい液および鼻汁)からウイルスRNAを抽出し、リアルタイムOneStep RT-PCR(TaqMan Probe法)によりインフルエンザウイルス遺伝子の検出を行った。その結果、15検体すべてからインフルエンザウイルスAH3亜型が検出された。また、RT-PCR陽性検体の増幅産物を用いて、HA遺伝子(HA1領域)の塩基配列を決定し、系統樹解析を実施した(図2)。15検体すべて2013/14シーズンのA(H3N2)ワクチン株A/Texas/50/2012と同じVictoria/208クレードの3Cサブクレード内に位置していた。
 
MDCK細胞を用いてウイルス分離を試みた結果、1検体で細胞変性効果が確認された。この培養上清に対してモルモット血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、8HA/25μLのHA価を示した。そこで、国立感染症研究所から配布された2013/14シーズンインフルエンザ同定キットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を行ったところ、A/Texas/50/2012 (H3N2) の抗血清に対するHI価は1,280(ホモ価1,280)であり、RT-PCRによる亜型同定結果とも一致していた。
 
県北地域のインフルエンザ定点から第38週に今シーズン初の患者報告が確認され、第40週には患者報告数16名となった。この期間、県内他地域のインフルエンザ定点におけるインフルエンザ患者の報告はなく、県北地域における限定的な小流行であったと考えられる。その後、第43週以降、県内全域のインフルエンザ定点から少しずつ患者報告が確認されている。過去5シーズンの患者発生状況については、第35~39週に初めて患者報告が確認されているが、ピーク時(週)は2009年のパンデミックの際は第48週、その他のシーズンは、第4~6週となっている。今シーズンは、シーズン始めに県北地域における小流行が認められたものの県内全域には広がっておらず、今後来年に向けて増加していくものと考えられる。
 
2012/13シーズンはAH3亜型が流行株の主流であったが、今シーズンの全国のインフルエンザ検出状況を確認すると(http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)、今回検出されたAH3亜型だけでなく、AH1pdm09やB型も検出されている。今シーズンは、まだ本格的な流行期を迎えておらず、本県においても今後どのような株が流行するか、その動向に注目していく必要がある。

 

栃木県保健環境センター
     微生物部 櫛渕泉美  岡本その子 舩渡川圭次
     企画情報部 舟迫 香

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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