北半球の2017/18インフルエンザシーズンの総括
(IASR Vol. 39 p202: 2018年11月号)
2017/18シーズンは, B/山形系統のインフルエンザウイルスが優勢であったことで特徴づけられる。北半球の2017/18シーズンの開始やピークのタイミングは, 前シーズンと同様であったが, 概して, 過去に比べて, 流行期間が長く, ヨーロッパや北米において, その傾向が顕著であった。前シーズンと比較して, 流行期間中には, B型インフルエンザの活動性がより長期間観察され, より大きな流行となった。ヨーロッパのほとんどの国でB型インフルエンザウイルスが優勢であり, カナダや米国で検出されたウイルスの30~40%, 中央アジアでは40~50%がB型インフルエンザウイルスであった。これらのB型インフルエンザウイルスは, ほとんどが山形系統であった。興味深いことに, 北米においては, インフルエンザA型ウイルスの中では, 2シーズン連続で, インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢であり, その結果, 医療機関受診者数, 入院者数, 流行期間の長さにおいて, より重症なシーズンとなった。インフルエンザA(H3N2)ウイルスは, 依然として抗原性解析が困難であった。報告された抗ウイルス薬耐性のレベルは極めて低かった。
当該シーズン中の罹患率, 死亡率は, 過去のシーズンとほぼ同様であったが, いくつかの注目すべき例外事象があった。外来患者のピークレベルは, カナダにおいては5年間の平均を超え, 米国においては, 2009~2010年のパンデミックレベルに近かった。インフルエンザに関連した入院率・死亡率は, 米国においては過去の平均を上回ったが, カナダにおいてはほぼ平均のレベルであった。デンマークや英国など, 北部ヨーロッパのいくつかの国においては, インフルエンザの活動性は, 過去のシーズンを上回った。インフルエンザに関連した入院率はフランスと英国において高かった。
当該シーズンのワクチン効果は, ほとんどのワクチンが山形系統を含んでいなかったにもかかわらずインフルエンザB型ウイルスに対しては, 概して高かったが, インフルエンザA(H3N2)ウイルスについては, 医療機関を受診する疾病の予防においては相対的に低かった。
国々に対しては, 季節性インフルエンザについてのよりよい理解と対応につながるよう, 多くの情報源からの情報収集が奨励される。様々な情報源から得られた様々な疫学的特徴を詳細に評価することは, 季節性インフルエンザの重症度を理解し, それに従った対応をとるための鍵である。一つの情報源からのデータは実際の状況を反映していないかもしれない。インフルエンザ様疾患(ILI), 重症急性呼吸器疾患(SARI)の患者における検査確定患者の割合や, さらなるウイルスの特性の解析によって, インフルエンザウイルスの変化の探知が可能となり, これは対応方針の決定にも寄与することになる。