国立感染症研究所

部長の研究テーマなど

 

生物がつくる水に溶けない低分子が脂質です。脂質は、生物の基本ユニットである細胞において内外を隔てる膜のおもな成分であり、水から自動的に分離するという特性を膜の形成に発揮しています。さらに、脂質は、重さ当たりの酸化的エネルギー備蓄が大きいので栄養としても重要であり、環境からの情報を細胞内へ伝達する際の制御因子としても働くなど、多彩な生物学的役割をもっています。

水に溶けない脂質を生体内のような親水的な環境においてうまく利用するには、そのための特別な仕組みがあるはずです。しかし、その仕組みを解き明かすことは、水と油を同時に扱わねばならぬ技術的むずかしさもあり、意外なほどに遅れています。

スフィンゴ脂質は、スフィンゴシンとよばれる構造をもった脂質の一群であり、真核生物には普遍的に存在しています。スフィンゴ脂質は、ヒト自身がもつさまざまな脂質群のなかで病原体との相互作用に一番関わっている脂質群でもあります。私たちは、哺乳動物細胞におけるスフィンゴ脂質の生合成とその制御機構を生化学的手法と遺伝学的手法とを駆使しながら研究しています。その主な内容は、病原体そのもののではなく、宿主細胞側の研究ですが、哺乳動物細胞におけるスフィンゴ脂質の代謝や役割に関する研究の成果が、感染病原体と宿主細胞との相互作用を解明することや遺伝病の原因を解明することなどに貢献し、疾病の予防・治療といった応用面への波及効果をしめすようになってきています。

 

病原体を増殖させうる培養細胞は、未知の病原体の同定から新規ワクチンの開発に至るまで、感染症対策になくてはならない重要な研究資源です。適切な培養細胞の創出は感染症対策に限らず生物医薬全般への波及効果があり、必要な培養細胞を創出する戦略を生み出すことは世界的な医療イノベーション競争においてその資源基盤を押さえるという国益上の見逃せない側面もあると考えられます。しかし、培養細胞の開発・改良には長い時間と多くの試行錯誤を要するという問題が常につきまとっています。

私たちは、哺乳動物培養細胞におけるゲノムワイドな解析手法(レンチウイルスベクター上に構築したshRNAライブラリやCRISPR/CAS9ゲノム編集ライブラリを用いた細胞遺伝学的手法など)を取り入れて、最新の手法を駆使しながら、感染症に関する宿主細胞側からの重要な情報や細胞材料を提供する研究にも取り組んでいます。そのような方向性の研究を展開する準備の一つとして、微生物学研究だけでなくワクチン生産においても広く使われているアフリカミドリザル腎臓由来Vero細胞の全ゲノム配列を他機関との共同研究により、世界に先駆けて決定しました。

Vero細胞研究に関しては別ページに詳細に解説し、培養細胞専門用語も別途説明しました。

 

以下のホームページでは、花田が関わってきた研究の主なものを、いくつかの項目に分けて、詳しくご紹介してゆきます。記事は、随時ふやしてゆきたいと思います。

 

それぞれの項目はお互いに関係していますが、項目ごとに読んでもその内容がなるべくわかるように配慮したつもりです。そのため、それぞれの記事の間に図表を含めて重複部分があります。

一緒に研究してみたいと思う方は、私に連絡をください(hanak[at]nih.go.jp; [at]@に変換するとメールアドレスになります)

私のプロフィールなどはResearchmapに記載しています。

 

感染研 細胞化学部 花田賢太郎

2013220日)

2015623日一部改訂、2016年9月13日 一部修文

 

細胞化学部長から

花田の研究テーマなど(このページ)

I. 私の志向する生化学、細胞生物学、そして体細胞遺伝

II. スフィンゴ脂質につい

III. 哺乳動物細胞におけるセラミド輸送に関する研

IV. 病原体による宿主脂質ハイジャック機序の解明と創薬への応用

V. 動物培養細胞に関する用語など

VI. Vero細胞の物語 ~その樹立からゲノム構造の決定、そして未来へ~

花田研究業

その他の記事

1.生命、細胞、生体

2.リン脂質、スフィンゴ脂質およびセラミドの命名事始め

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