国立感染症研究所

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<速報>死亡例を含むA型肝炎の家族内感染事例―秋田県

(掲載日 2015/4/15)   (IASR Vol. 36 p. 87: 2015年5月号)

A型肝炎の予後は一般に良好であり、医療体制の整っているわが国では劇症例・死亡例は稀であるが、今回、死亡例を含む家族内感染事例を経験したので報告する。

に示した通り、5人家族のうち、2015年1月13日に最初の患者が発症し、1~2週間の間隔をおいて次々と発症例がみられた(発症4名、無症状1名)。そのうち、50代男性が発症15日後に急性肝不全で死亡した。民間検査機関において、無症状者も含めて全員の血清からA型肝炎ウイルス(HAV)に対するIgMが検出された。

当センターでは、民間検査機関に残存していた血清を取り寄せて、HAV+449/HAV-557(IASR 35: 154-156, 2014に従い改変)/ HAV+482-P-FAMを用いたリアルタイムPCR(下記文献参照)によるウイルスゲノムRNAの検出を試みたところ、入手できた3検体からHAVの遺伝子が検出された。次にHAV-JCT-2F/HAV-JCT-1R-A、およびHAV-JCT-2F/HAV-JCT-2Rを用いたsemi-nested RT-PCR(下記文献参照)により、遺伝子断片の増幅を試みたところ、「Akita-3」と「Akita-4」から615bpの増幅断片を得ることができた。に示したとおり、両者の塩基配列は完全に一致しており、分子系統解析ではIB型と分類された。IB型は国内では報告が少ないが、2014年に千葉県で検出されたウイルスに最も相同性が高かった。

聞き取り調査では、5人とも海外渡航歴は無かった。本事例は、医療機関から保健所に届出があったのが初発から1カ月以上経過した3月4日であり、共通食材などの感染ルートを特定することはできなかった。

A型肝炎は感染症法上の全数把握疾患の4類感染症であり、1人でも確認したら直ちに保健所に届け出る必要があることを今一度周知徹底しておく必要がある。

 
参考文献
  1. 野田 衛, A型肝炎ウイルス, 食品衛生検査指針微生物編2015年版, 740-747, 2015

秋田県健康環境センター保健衛生部
  斎藤博之 秋野和華子 佐藤寛子 柴田ちひろ 佐藤由衣子 安部真理子
秋田県仙北地域振興局福祉環境部
  飯塚禮子
秋田県健康福祉部健康推進課
  木内 雄

 

 

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