国立感染症研究所

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<速報>2010年1月~2013年3月における手足口病およびヘルパンギーナ患者検体からのエンテロウイルス検出状況―石川県

(掲載日 2013/6/7)

 

石川県における2010年1月(第1週;1月4~10日)~2013年3月(第13週;3月25~31日)の手足口病およびヘルパンギーナ患者検体からのエンテロウイルス検出状況を報告する。

患者発生状況:2010年第1週~2013年第13週の感染症発生動向調査による石川県における手足口病およびヘルパンギーナ患者報告数の週別推移を図1に示した。

石川県における手足口病患者報告数のピークは、2010年は第28週(7月12~18日)であった。2011年は第31週(8月1~7日)にピークとなり、その後減少傾向にあったが、第43週(10月24~30日)から再び増加傾向となり、第51週(12月19~25日)にピークとなり、その後減少した。2012年は2010年、2011年と比較し、患者報告数が少なく、そのピークは、第37週(9月10~16日)であった。これ以降も患者報告があり、2012年第49週(12月3~9日)~第52週(12月24~30日)および2013年第7週(2月11~17日)~第11週(3月11~17日)にも患者報告数の増加がみられた。

一方、ヘルパンギーナ患者報告数のピークは、2010年は第28週(7月12~18日)、2011年は第31週(8月1~7日)、2012年は第30週(7月23~29日)であり、いずれもほぼ同時期であり、流行の規模も同様であった。

エンテロウイルス検出状況:2010年1月~2013年3月末までに、石川県内の病原体定点医療機関から搬入された手足口病およびヘルパンギーナ患者から採取された検体(咽頭ぬぐい液)について、培養細胞によるウイルス分離および、検体からのエンテロウイルス遺伝子検出を行い、いずれかの方法で陽性となった検体の数を集計した。ウイルス分離では、2種類(Vero、RD-A)の培養細胞を用い、CPEを形成したものについては、国立感染症研究所から分与を受けた抗血清にて中和試験を行いウイルスの同定を行った。一方、検体からの遺伝子検出については、咽頭ぬぐい液からRNAを抽出したのち、VP4-VP2部分領域を目的としたsemi-nested-PCR法1)によりDNAを増幅し、ダイレクトシークエンス法によりVP4-VP2部分領域(615bp)の塩基配列を決定し、NCBI BLASTを用いた相同性検索により同定を行った。エンテロウイルス71型(EV71)のsubgenogroupはVP1領域に基づいた分類であるため、VP4領域によりsubgenogroupを直接きめることは困難である。このためGenBankに登録されているsubgenogroupが既知のEV71全長配列情報より得られたVP4 領域(207bp)を各subgenogroupの参照配列とし、検出したEV71の一部とともに系統樹解析を行うことでsubgenogroupを類推した。

搬入された手足口病患者検体94検体のうち50検体(53.2%)から、ヘルパンギーナ患者検体33検体のうち26検体(78.8%)からエンテロウイルスが分離・検出された(表1)。検体採取週別の手足口病およびヘルパンギーナ患者検体からのエンテロウイルス分離・検出状況を図1に示す。

手足口病患者検体から、2010年はEV71が主に分離・検出された。2011年は第27週(7月4~10日)~第35週(8月29日~9月4日)にかけてコクサッキーウイルスA6型(CVA6)、第46週(11月14~20日)~2012年第4週(1月23~29日)にかけてCVA16、2012年第38週(9月17~23日)~2013年第9週(2月25日~3月3日)にかけてはEV71が主に分離・検出された。

一方、ヘルパンギーナ患者検体から分離・検出されたエンテロウイルスは、CVA10、CVA6、CVA4、CVA2、CVA9、CVB1、EV71など多岐にわたっていた。

検出されたEV71のうち、手足口病患者由来の19検体、ヘルパンギーナ患者由来の2検体について系統樹解析を実施した結果、2010年に検出されたEV71のsubgenogroupはC2、2012~2013年に検出されたEV71のsubgenogroupはB5と類推された(図2)。

石川県では、ヘルパンギーナ患者検体から様々なエンテロウイルスが分離・検出されている。一方、手足口病患者検体からは、2010年はEV71 subgenogroup C2、2011年はCVA6およびCVA16、2012~2013年3月にかけてはEV71 subgenogroup B5が主に分離・検出されており、全国と同様の傾向を示した2,3)。 

石川県における手足口病患者報告数は年ごとに異なり、また、2011年、2012年は、冬季にも患者報告数の増加がみられた。市中に流行する原因ウイルスの違いが、手足口病患者発生状況に影響した可能性が示唆されることから、ウイルス型別を含めたサーベイランスが重要であると考えられる。

今後は分離株を用いて、VP1領域の遺伝子解析を進める予定である。 

 

参考文献
1)山崎謙治, 他, 感染症学雑誌 75: 909-915, 2001
2)IASR 33: 55-56, 2012
3)IASR 34: 9-10, 2013

 

石川県保健環境センター 児玉洋江 成相絵里 崎川曜子

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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