国立感染症研究所

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<速報>2014年度における手足口病疑い患者から検出されたウイルスの特徴と患者数の推移―大阪府

(掲載日 2015/4/1) (IASR Vol. 36 p. 71-72: 2015年4月号)

手足口病は通常、夏季に流行し、Enterovirus A 71(EV-A71)、Coxsackievirus A6(CV-A6) およびCV-A16が主な原因ウイルスとして知られている。大阪府では、ピーク時の定点当たりの患者数が8.03であった2013年度と比較して0.51であった2014年度は、手足口病の流行が非常に低調であったが、例年とは異なり、冬季にも患者数の増加が認められた。また、患者から検出されたウイルスの種類にも特徴が認められた。本稿では大阪府における2014年度の手足口病疑い患者の発生動向と検出されたウイルスの遺伝子型の特徴を報告する。

感染症発生動向調査事業に基づき指定の医療機関(病原体定点)から大阪府立公衆衛生研究所に搬入された手足口病疑い患者検体を対象に、咽頭ぬぐい液、唾液および糞便検体からウイルスRNAを抽出し、エンテロウイルスVP4-2領域を標的としたRT-semi-nested PCR1)を実施した。増幅産物をダイレクトシークエンスした結果を用いてウイルスの遺伝子型別を行った。さらに、すべての検体に対し、Human parechovirus(HPeV)に対するRT-real time PCR2)を実施した。

2014年4月1日~2015年3月6日までの期間に、手足口病疑い患者検体は計47検体搬入され、そのうち37検体からウイルス遺伝子が検出された。重複感染で検出されたものを含めたウイルスの検出頻度は多い順にCV-A16(17検体)、HPeV(10検体)、Rhinovirus(RV、6検体)、CV-A6(4検体)、EV-A71、CV-A2、CV-A4、CV-A5、CV-A10(各1検体)であった。HPeVが検出された10検体のうち4検体が重複感染で、重複していたウイルスはそれぞれCV-A4、RV、CV-A16、RVとCV-A6であった。CV-A16が検出されたのは2014年第35週~2015年第9週、HPeVが検出されたのは 2014年第25~32週であった(図1)。臨床的には2014年夏季のHPeVが単独で検出された手足口病患者では手足の水疱が不鮮明であるとの報告が散見されたが、冬季のCV-A16が検出された患者では典型的な症状を呈する手足口病との報告が多数であった。なお、手足口病患者からHPeVが検出されていた時期のヘルパンギーナ患者検体74検体中10検体(14%)からもHPeVが検出されていた。

大阪府の手足口病患者数の推移を全国と比較すると、全国的にも低流行ではあったが、例年どおり夏季に症例数が多く冬季は低レベルで推移しているのに対し(図2)、大阪府では夏季と冬季に同程度の患者数の増加を示している点で特徴的であった(図1)。NESIDから得た情報によると、2014年の夏季における全国の手足口病患者からのウイルス検出はEV-A71およびCV-A16が主で、冬季にはCV-A16が主となった。大阪府における手足口病は、2014年の夏季にHPeVが、冬季にCV-A16が主な流行の原因だった点でも全国の発生動向とは異なる傾向を示した。

2014年度大阪府で認められた夏季と冬季の二峰性の患者数の推移は、手足口病の典型的な季節的流行パターンとは異なっていた。また、病原体も通常みられるウイルスとは異なり、夏季の症例でHPeV陽性例が目立った。HPeVは通常手足口病の原因になるウイルスとは考えられていないため、感染症発生動向調査事業では検出を行っていない場合もある。しかし、HPeV感染による発疹は臨床的には通常の手足口病と明確には区別しにくいため、手足口病の起因ウイルスの検索にはHPeVを含めた病原体検出を念頭に置く必要があると考えられる。

 
参考文献
  1. 石古博昭, 他, 臨床とウイルス 27: 283-293, 1999
  2. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 46: 2519-2524, 2008 
大阪府立公衆衛生研究所感染症部
  ウイルス課 中田恵子 加瀬哲男
国立病院機構名古屋医療センター
   統括診療部 駒野 淳
 

 

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