国立感染症研究所

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浅漬の食中毒事件を受けての漬物の衛生規範の改正等について

(IASR Vol. 34 p. 128-129: 2013年5月号)

 

1.札幌市等で発生した浅漬食中毒事件の概要
2012(平成24)年8月に札幌市等で発生した浅漬(「白菜きりづけ」)による腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件は、患者数169名、死者8名を数え、患者発生場所の多くは高齢者施設であったが、当該食品はスーパーやホテル、飲食店においても流通していた。また、発生時は観光シーズンであったため、北海道内のみならず、北海道外の自治体においても患者が確認された。

(1)食中毒事件の探知について
平成24年8月7日に、医療機関から札幌市内の高齢者施設Aの入所者7名が下痢、発熱、血便等の症状を呈して受診している旨、札幌市保健所に連絡があった。また、8月8日には、札幌市内の高齢者施設Bから入所者4名が下痢症状を呈している旨および高齢者施設A、Bは同一の業者に調理を委託しており、当該業者が受託している他の施設でも同様の症状を呈した入所者がいるとの情報提供があった。

(2)病因物質の特定について
有症者の検便、有症者の発生した高齢者施設に検食として保存されていた共通食である「白菜きりづけ」および製造施設従業員の検便からいずれもO157 VT1&2が検出され、症状、潜伏時間が腸管出血性大腸菌O157によるものとほぼ一致することから、腸管出血性大腸菌O157が原因の食中毒と断定した。

(3)汚染原因の考察について
本事件は、有症者の検便および高齢者施設等に保存されていた「白菜きりづけ」からO157を検出し、遺伝子型が一致したことから、漬物製造施設E社を原因施設と断定するに至った。

原材料の遡り調査、製品の流通調査および再現試験に基づき製造管理状況を調査した結果、当該施設における「白菜きりづけ」の製造過程において、何らかの経路で持ち込まれたO157により「白菜きりづけ」が汚染されたことが原因と推定されるが、特定には至らなかった。

2.審議会における議論
厚生労働省では、同様の食中毒の再発防止を図るため、平成24年10月1日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒・食品規格合同部会において、当該食中毒事件の中間報告を踏まえた今後の対応について審議を行った。その結果、漬物の衛生規範を改正し通知を発出した。

3.漬物の衛生規範改正
漬物の衛生規範は、1981(昭和56)年に漬物の衛生確保を図るために営業者が実施すべき指針として定められたもので、1996(平成8)年の腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件の続発を踏まえ策定した「大量調理施設衛生管理マニュアル」や2004(平成16)年にコーデックス委員会が示している食品衛生の一般原則を参考に全面改正した「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)(以下、「管理運営基準」という。)」によって、実質的な衛生管理の指導が行われてきた。

今般、これらの一般的な衛生管理に加えて、浅漬に特有の内容として、漬物の衛生規範改正を行った。

4.衛生規範改正後の対応等
改正した漬物の衛生規範に基づき、浅漬の衛生管理のポイントをまとめた事業者向けのリーフレットを作成・配布を行い、厚生労働省ホームページにおいてもリーフレットを掲載している。また、都道府県等において関係事業者への周知、指導を行い、一斉取り締り等において、改善状況の確認を行っており、2013(平成25)年の夏期一斉取り締まり等においても引き続き改善状況の確認を行うこととしている。

また、加熱せずに喫食するカット野菜およびカット果物を加工する施設については、大量調理施設であるか否かにかかわらず、大量調理施設衛生管理マニュアルを踏まえて指導を実施することとしている。

なお、農林水産省における生産段階における取り組みおよび漬物生産者団体における衛生管理の取り組みについては、それぞれのウェブサイト上で閲覧可能である。

 

厚生労働省医薬食品局
食品安全部監視安全課食中毒被害情報管理室

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