(IASR Vol. 34 p. 130-131: 2013年5月号)
012年8月に、県内某飲食店において発生した腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒事例について、概要を報告する。
発生状況
2012(平成24)年8月21日、A保健所に管内医療機関から「飲食店において釜飯を喫食した2名が、8月19日に腹痛、下痢(血便)の症状を呈し入院している」との連絡があった。同日、同飲食店の営業者の家族1名も腹痛、吐き気を呈し入院しているとの連絡があった。
さらに8月22日、同医療機関から前述3名の他、同飲食店利用客でもある患者の家族1名から腸管出血性大腸菌O157が検出されたとの連絡があった。また、8月14日に同飲食店を利用した別グループの1名からも同菌が検出されたとの連絡があった。
A保健所が調査した結果、営業者の家族を除く患者4名は2グループ3家族に分かれており、共通した食事は8月14日に利用した同飲食店に限られることがわかった。
同飲食店は営業者家族4名と従業員1名で調理および接客を担当し、発症者は主に調理を担当、提供食品の味見のほか、昼食や夕食で家族らとともに賄い食を喫食していた。
前述の利用客の患者4名について、トイレの使用状況を確認したところ、1名以外は使用していなかったことから、環境からの感染の可能性はないと判断した。
これらの状況から、同飲食店を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒と断定し、食品衛生法に基づき、同飲食店に対し7日間の営業停止命令を行うとともに、他の利用客の調査を実施した。
その調査の結果、同飲食店の利用客のうち、上記2グループ4名を含む計7グループ12名から腸管出血性大腸菌O157が検出されていることが判明した。これらのグループは、8月12日、14日、15日、16日、18日のいずれかに同飲食店を利用していた。飲食店利用日ごとの発症者数を表1に示す。B保健所の検査によると、初めに5名から検出されたO157株はすべてVT1&2陽性であった。このほか、喫食者便8検体中3検体、発症者と接触した者の検便23検体中1検体からO157・VT1&2が検出された。また、発症した1名を除く他の調理従事者の便4検体、施設・器具のふきとり35検体、残置食品25検体について、O157はすべて陰性であった。
解析結果および考察
環境保健センターでは利用客12名、調理従事者1名の計13名から検出された13株のO157を入手した。これらの発生場所の内訳は、A保健所管内8株、C保健所管内1株、D保健所管内3株、他県1株となっており、広域にわたっていた。H型別は、凝集試験により行ったところ、すべてH7型であった。これら13株について、制限酵素XbaIを用いてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行った結果、泳動パターンにおいてバンドが2本の違いを示す株が1株あったが、残り12株はすべて同一パターンを示し(図1)、これら13株は同一の感染源に由来した株であると推定された。また、同時期に発生していた他都道府県の集団食中毒で得られた菌株のPFGE遺伝子パターンを入手し、これと比較した結果、異なるパターンであることを確認した。
保健所による喫食調査から、原因食品の1つとして同飲食店の自家製漬物が挙げられたが、原因の特定には至らなかった。
厚生労働省が行った平成24年度食品の食中毒原因菌汚染実態調査の結果報告によると1)、食中毒原因菌の生野菜の汚染はゼロではないことがわかる。O157、O26、O111は3年連続で確認されなかったが、これら以外の大腸菌については、野菜の種類によって5~44%の汚染が確認されている。このことから、漬物などの非加熱食品を飲食店において提供する際には、手指や調理器具の消毒、野菜の洗浄・消毒の徹底が重要であると考えられる。
また、本事例はお盆期間中に発生し、関東地方から帰省中に喫食して発症し、Uターン後に検査を行ったケースもあり、拡大および再発防止のため、広域的な連携が重要であると感じた。
謝辞:御協力いただきましたS県衛生研究所の皆様、保健衛生課食品衛生担当の皆様に厚くお礼申し上げます。
参考文献
1)平成25年3月29日付け食安監発0329第2号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知
青森県環境保健センター
福田 理 武沼浩子 三上稔之
五所川原保健所
山口美由記 倉本ひろみ 黒田佳秀 小堀和亮 根橋香織
東地方保健所
小田桐和枝 川村千鶴子 奈良和久