国立感染症研究所

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米国で2013年に発生したサイクロスポラ症アウトブレイク(文献レビュー)

(IASR Vol. 35 p. 196-197: 2014年8月号)

サイクロスポラ(Cyclospora cayetanensis)はクリプトスポリジウムと同様、下痢を主症状とする腸管寄生原虫である。米国およびカナダではベリー類や野菜類といった生鮮農産物(特に輸入)の喫食による感染が多く報告されている。ここではそれらの事例のうち2013年に米国で発生したサイクロスポラ症アウトブレイク1-3)を紹介する。

2013年6~8月に、米国でサイクロスポラ症の症例が、米国届出義務疾患サーベイランスシステム(National Notifiable Disease Surveillance System)への通常の年間報告数(2012年は123人)と比べ大幅に多く報告されたため、米国疾病予防管理センター(US CDC)、州・地域の公衆衛生当局および米国食品医薬品局(US FDA)が協力して調査を開始した。2013年9月20日までに、テキサス州(278人)、アイオワ州(153人)およびネブラスカ州(86人)をはじめとする25州から計643人の患者がCDCに報告された。

ここで詳細は書かないが、アイオワ州およびネブラスカ州の調査により、両州で発生したレストラン関連の患者はアイスバーグレタス、ロメインレタス、レッドキャベツおよびニンジンを含むサラダミックスの喫食に関連していることが示された。両州の患者は多くが6月15~29日に発症しており、7~8月に報告された患者は主にテキサス州で発生していた()。調査の例として以下にテキサス州での詳細を記載する。

CDCは、テキサス州の州・地域の公衆衛生当局およびFDAと協力し、同州Fort Bend郡にあるメキシコ料理レストラン(レストランA)の客に発生したサイクロスポラ症患者クラスターを調査した。本事例の症例は、2013年6月1日以降にレストランAで食事をした胃腸炎患者と定義された。レストランAで食事をした症例30人のうち、22人は検査機関でC. cayetanensis 感染が確認されたが、8人は確認されなかった。感染源を特定するため、レストランAで食事をした日が判明した症例21人(検査機関確定患者15人、高度疑い患者6人)および症例と同じ日にレストランAで食事をした対照65人による症例対照研究が行われた。

レストランAで喫食した料理について、メニューを使用して症例と対照に質問が行われた。喫食した料理のデータおよびレストランAのレシピを参考にして、原材料レベルでの分析を行ったところ、以下の4種類の生鮮農産物に疾患との有意な関連が認められた。すなわち、生鮮シラントロ(英名:コリアンダー、セリ科の1年草で生で薬味として用いる)(マッチさせたオッズ比[mOR]=19.8;95%信頼区間(CI)[4.0~>999])、丸ごとの玉ねぎ(mOR=15.3;95%CI [2.1~697.7])、ニンニク(mOR=10.7;95%CI [1.5~475.4])およびトマト(mOR=5.5;95%CI [1.1~54.1])であった。この研究で対象となった症例全員が喫食したのは生鮮シラントロのみであった。問題の生鮮シラントロを使ってレストランAが調理し提供した4種類のサルサ(刻んだ野菜、果物、唐辛子、コリアンダー等から作るソース)のうち、生鮮シラントロを非加熱で使用した3種類のサルサ[ホットサルサ(mOR=8.0;95%CI [2.3~31.4])、サイドサルサ(mOR=5.7; 95%CI [1.6~23.7])およびファイヤーサルサ(mOR=3.5;95%CI [1.1~12.7])]に疾患との関連が認められた。生鮮シラントロを加熱(サイクロスポラは熱に弱い)して使用したサルサランチェラの喫食を報告した症例の割合は対照に比べて高かったが、このサルサには疾患との有意な関連は認められなかった(mOR=6.0;95%CI [0.7~75.2])。

追跡調査により、レストランAで症例が喫食した生鮮シラントロは、メキシコのPuebla産であることがわかった。レストランAで供されたレタスは、アイオワ州およびネブラスカ州の調査で関連が疑われた生産業者由来ではなく、疾患との関連も認められなかった。また、レストランAはレッドキャベツとニンジンを使用していなかった。

以上をまとめると、テキサス、アイオワおよびネブラスカ各州での追跡調査および疫学調査の結果は、2013年夏季に米国でサイクロスポラ症のアウトブレイクが複数件発生し、テキサス州の患者と、アイオワ州とネブラスカ州のレストラン関連の患者とでは関連した食品が異なっていたことを示した。 

米国で報告されたサイクロスポラ症の患者およびアウトブレイクの大多数が春~夏季の数カ月間に発生しているが、同じ年の同時期に発生したすべてのサイクロスポラ症患者が必ずしも同じ感染源に由来しているとは限らない。一例として、様々な地域由来の異なる生鮮農産物を感染源として1997年に数カ月間にわたり発生した、互いに関連のない独立した3件のサイクロスポラ症アウトブレイクが挙げられる。疫学調査で得られた確かなエビデンスから、これら複数のアウトブレイクは互いに関連がなく独立したものであった。


参考文献
  1. 米国疾病予防管理センター(US CDC) Notes from the Field: Outbreaks of Cyclosporiasis -United States, June-August 2013, MMWR 62: 862, 2013
    http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6243a5.htm?s_cid=mm6243a5_w
  2. 米国疾病予防管理センター(US CDC) Cyclosporiasis Outbreak Investigations-United States, 2013 (Final Update), December 2, 2013
    http://www.cdc.gov/parasites/cyclosporiasis/outbreaks/investigation-2013.html
  3. 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部:食品安全情報(微生物) No. 24 / 2013(2013.11.27)
    http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html

国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第二室     
  窪田邦宏 天沼 宏 荻原恵美子 酒井真由美 春日文子    

 

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