国立感染症研究所

我が国のレジオネラ症の発生動向調査における概要 2007.1.1~2016.12.31

国立感染症研究所 感染症疫学センター
(掲載日:2017年10月30日)

レジオネラ症は細胞内寄生性のグラム陰性桿菌であるレジオネラ属菌(Legionella spp.)による感染症で、菌は経気道感染する1。病型には肺炎型と感冒様のポンティアック熱型がある。ヒトからヒトへの感染はない。レジオネラ肺炎の潜伏期間は2~14日とされる2。レジオネラ属菌は一般的には水中や湿った土壌中などにアメーバ等の原虫類を宿主として存在し、20~45℃で繁殖し、36℃前後で最もよく繁殖する3

レジオネラ症は感染症法に基づく感染症発生動向調査において1999年4月から全数把握の対象となり、四類感染症としてすべての医師等に管轄の保健所への届出が義務づけられている疾患である(感染症法第12条)4。また、2006年4月から報告内容の変更が行われ、患者属性等がより詳細となった。近年、高齢化の進む日本では今後の動向が注目されている5。本まとめは、報告がより詳細となった診断年が2007年以降の10年間のデータについて診断年月日に基づき集計した。人口数値として、総務省統計局人口推計(各年10月1日現在人口:2007年~2016年)を利用した6

患者発生状況:2007年1月1日~2016年12月31日に10,310例(男性8,394名、女性1,916名、うち死亡196名)が診断された。7月を中心に増加し、翌3~5月にかけて減少する傾向が認められ、近年、その季節変動は明確になってきている(図)。

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図.感染症発生動向調査における月別レジオネラ症患者発生状況、2007年1月~2016年12月

患者全体の平均年齢は報告時点で67.8歳(男性66.3歳 女性74.6歳)であり、50歳以上の者が91.9%を占めていた。届出時点の致命率は70代で2.1%であり、高齢者ほど、高くなる傾向がみられた。2007年及び2016年の人口10万人あたりの粗罹患率はそれぞれ0.52、1.26、また年齢調整罹患率(基準人口:昭和60年モデル人口)はそれぞれ0.34、0.71であった。年齢階級別罹患率は、50代以上の年齢層で2016年は2007年に比べて約2倍であった。また、都道府県別年齢調整罹患率は北陸地方と北関東・甲信地方が比較的高かった。

病型については、肺炎型(95.6%)、ポンティアック熱型(3.6%)、無症状病原体保有者(0.8%)があるが、年代別では20代以下では肺炎型の割合が約7割とその他の年齢層に比べて低かった。

症状・診断名は、発熱(91%)、肺炎(89%)、咳嗽(46%)、呼吸困難(40%)、意識障害(17%)、下痢(10%)、多臓器不全(8.6%)、腹痛(2.3%)であり、高齢者において呼吸困難を呈する割合が高い傾向が認められた。

なお、診断方法としては、尿中抗原の検出9,826例(95.3%)、培養294例(2.9%)、病原体遺伝子の検出265例(2.6%)、血清抗体価の測定164例(1.6%)であった(複数検査の症例あり)。経年変化をみると、病原体遺伝子の検出(PCR法・LAMP法)が実施されている割合が2012年以降2%を越え2014年4.6%、2015年3.8%、2016年2.9%であった。レジオネラ属菌を広く検出するLAMP法を用いたレジオネラ検出試薬キットが2011年10月に健康保険適用されている。

感染原因・感染経路が確定とされているものは169例(1.6%)であり、水系感染83例、塵埃感染9例、その他80例(うち64例が不明)(重複あり)であった。推定とされているもののうち、水系感染が疑われたものは3,503例、塵埃感染が疑われたものは547例(うち水系感染・塵埃感染の両方が疑われたものが121例)であった。

患者職業(15歳以上)について、日本標準職業分類及び日本標準産業分類に従って分類した。職業・産業の分類において最も多い無職(いずれも49.4%)、さらに分類不能(職業では11.0%、産業では12.0%)、不明(いずれも5.9%)以外で、職業では建設・採掘職(8.4%)、輸送・機械運転職(4.7%)の順に多く、産業では建設業(9.2%)、運輸業・郵便業(5.0%)の順に多かった。

レジオネラ症は増加傾向にあり、特に高齢者でこの傾向は大きい。また、居住地域、職業・産業による偏りや、海外では気象条件などの環境要因との関連を明らかにしている研究7もあることから、国内においてもこれらの要因に関する分析が重要である。高齢化の進む日本では、今後もレジオネラ症が増加していく可能性があり、環境曝露、職業曝露等の視点を含めた対応・対策を行うことが重要と考えられる。

 
【参考文献】
  1. 国立感染症研究所. レジオネラ症とは. http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ra/legionella/392-encyclopedia/530-legionella.html.
  2. Cunha BA, Burillo A, Bouza E. Legionnaires' disease. Lancet (London, England) 2016; 387(10016): 376-85.
  3. 特集:レジオネラ症 2008.1~2012.12. 病原微生物検出情報(IASR).
  4. 厚生労働省 感染症法に基づく医師の届出のお願い. http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html.
  5. <注目すべき感染症>最近のレジオネラ症の発生動向 感染症発生動向調査週報(IDWR) 2014年第25号.
  6. 総務省統計局 人口推計 各年10月1日現在人口.
    http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000000090001.
  7. Fisman DN, Lim S, Wellenius GA, et al. It's not the heat, it's the humidity: wet weather increases legionellosis risk in the greater Philadelphia metropolitan area. The Journal of infectious diseases 2005; 192(12): 2066-73.

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