国立感染症研究所

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静岡市における2018/19シーズンのA群ロタウイルスG8P[8]の流行について

(IASR Vol. 40 p207:2019年12月号)

概 要

静岡市では, 2015/16シーズンに, こども園を中心としたA群ロタウイルス(RVA)の小流行が発生して以降, 地域の小児科医と連携し, ロタウイルス胃腸炎患者検体の収集・解析を行っている。2018/19シーズンにおいて, これまで国内でもほとんど検出されていなかったRVA G8P[8]の流行を経験したので報告する。

方 法

国立感染症研究所病原体検出マニュアルに従って, VP7(G型)遺伝子についてRT-PCR法で増幅し, シークエンス解析を行った。遺伝子型の判定はBLASTおよびRotaCを用いて行った。さらに, 遺伝子型G8のウイルスが検出された検体についてVP4(P型), VP6(I型)およびNSP5/6(H型)遺伝子についても同様に解析を行った。

結果・考察

2018/19シーズンでは, 2検体からG2, 64検体からG8, 5検体からG9が検出された(表1)。RVAは11本の分節ゲノムを有し, その遺伝子型の組み合わせは Gx-P[x]-Ix-Rx-Cx-Mx-Ax-Nx-Tx-Ex-Hx(xは数字)と表記される。多くのRVAはWa-like遺伝子群, DS-1-like遺伝子群に分類され, それらの遺伝子型構成は, それぞれG1/3/4/9-P[8]-I1-R1-C1-M1-A1-N1-T1-E1-H1, G2-P[4]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2と表記される。過去にほとんど検出されていないG8が多数検出されたため, 検出されたG8がどの遺伝子群であるのか調べる目的で, 分節遺伝子のうちVP4, VP6, NSP5/6の各遺伝子について解析を行った。解析できた39例はすべてG8-P[8]-I2-H2であり, DS-1-like遺伝子群である可能性が高いことが分かった。また, 断片的に解析できた事例においても矛盾するものはなかった。

G8は病原微生物検出情報によると2013/14シーズン以降1シーズン当たり数例から数十例程度の報告しかないマイナーな型であるが, 2014年に北海道1), 2017年に静岡県中部2)でアウトブレイクが報告されている。これらの報告によると, アウトブレイクを起こしたG8は当所で検出されたものと同様のDS-1-likeのG8P[8]であることが示唆されている。2018/19シーズンの検体のVP7遺伝子の塩基配列について1検体を抜き出して比較したところ, 2017年の検体との相同性は99.67%, 2014年北海道の検体との相同性は99.56%だった。以上の結果から, 本市で流行したG8については2013/14シーズン前後から国内で広がっていったものである可能性が高いと考えられる。また拡大したと考えられる時期はロタウイルスワクチン導入後に当たり, ワクチン接種が影響した可能性も否定できない。

また, 静岡県中部におけるアウトブレイクの報告では, G8感染患者において, ロタウイルスワクチン接種者では症状が穏やかになるとの報告がされている。当所で検出されたG8感染患者でも同様の傾向があるかどうか調べる目的で, ロタウイルスワクチン(Rotarix®およびRotaTeq®)導入後の患者である7歳未満のG8感染患者41人を抜き出し, ワクチン接種歴あり(18人:Rotarix®12人・RotaTeq®6人), なし(23人)で分類し, 重症度の指標である変法Vesikariスコア3)表2を比較した。ワクチン接種歴なし群(10.8±3.4)より, ワクチン接種歴あり群(8.6±2.6)の平均Vesikariスコアが低く(P<0.05), 報告と矛盾しない結果となった。ただし, 他の遺伝子型(G2, G1)のRVAと比べると, ワクチンによる症状の抑え方が異なる傾向があり, 現在継続して調査・研究を行っているところである。

謝辞

検体提供等に多大なるご協力をいただきました 「キッズクリニックさの」 佐野正先生に深謝いたします。

 

参考文献
  1. Kondo, et al., Emerging infectious diseases 236: 968, 2017
  2. Hoque, et al., Vaccine 361: 43-49, 2018
  3. Ruuska, et al., Scandinavian journal of infectious diseases 223: 259-267, 1990
 
 
静岡市環境保健研究所     
 前畑高明 岡村 創 浅沼理子 丸山幸男

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