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東京都における新型コロナウイルス感染症確定例4,109例の記述疫学(2020年6月3日現在)

(IASR Vol. 41 p111-113: 2020年7月号)

2020年に中華人民共和国(中国)武漢市を中心に広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は, わが国で2020年1月16日より疑似症サーベイランスの枠組みで探知されることとなり, 同年1月28日に感染症法に基づく指定感染症に指定され, 診断した医師は直ちに管轄の保健所に届け出ること(感染症発生動向調査)が義務づけられた。都内では, 1月24日に1例目の患者が報告された後, 継続的に患者が報告され, 東京都からの報告数は全国の約30%を占めた。

本稿では, 感染症発生動向調査に届け出られた東京都におけるCOVID-19確定例に関する情報, および東京都報道資料より収集した情報を基に記述する。そのため, 収集時に厚生労働省および東京都が公表していた情報と現時点でのそれらとは異なっている場合がある。なお, チャーター便およびクルーズ船の症例は本検討からは除外した。これらの情報収集は現在も進行中であるため, 今後, 修正もしくは更新がなされる可能性がある。

2020年1月16日~4月30日までの期間に, 感染症発生動向調査に基づき都内の医療機関等から報告された症例は4,109例であった。

性別は男性2,461例(59.9%), 女性1,648例(40.1%)であった。

年齢の中央値は46歳(四分位範囲32-63歳), 年齢群の分布は, 男性では10歳未満36例(1.5%), 10代27例(1.1%), 20代355例(14.4%), 30代443例(18.0%), 40代488例(19.8%), 50代436例(17.7%), 60代291例(11.8%), 70代246例(10.0%), 80歳以上139例(5.6%)。女性では10歳未満23例(1.4%), 10代36例(2.2%), 20代349例(21.2%), 30代305例(18.5%), 40代207例(12.6%), 50代232例(14.1%), 60代141例(8.6%), 70代147例(8.9%), 80歳以上208例(12.6%)であった(図1)。

居住地は都内3,950例(96.1%), 都外(国外除く)154例(3.7%), 国外3例(0.1%), 不明2例(0.1%未満)であった。都内の内訳は, 区部では, 世田谷区391例, 新宿区296例, 港区270例, 杉並区196例, 練馬区185例, 中野区182例, 大田区182例, 品川区168例, 渋谷区156例, 台東区153例, 目黒区148例, 足立区128例, 江東区127例, 江戸川区123例, 板橋区119例, 豊島区117例, 葛飾区105例, 墨田区103例, 中央区99例, 北区77例, 文京区64例, 荒川区46例, 千代田区27例。その他の市町村では, 府中市55例, 八王子市39例, 西東京市39例, 町田市39例, 多摩市33例, 調布市32例, 三鷹市25例, 日野市19例, 小平市18例, 武蔵野市16例, 立川市15例, 小金井市14例, 国分寺市13例, 東久留米市13例, 狛江市12例, 清瀬市11例, 稲城市9例, 東村山市9例, あきる野市7例, 東大和市6例, 昭島市6例, 国立市6例, 羽村市5例, 青梅市4例, 武蔵村山市1例, 西多摩郡1例, 福生市1例, 地区不明53例であった。国外の内訳は, 中国3例であった。

感染地域として記載のあった3,314例のうち, 1地域のみ記載されているものは3,260例であった。その内訳は都内2,433例, 都外(国外除く)51例, 国内(都道府県不明)692例, 国外84例であった。国外の内訳は米国17例, 英国15例, フランス13例, スペイン6例, タイ6例, カナダ4例, 中国3例, フィリピン3例, イタリア2例, エジプト2例, ドイツ2例, ニュージーランド2例, ブラジル2例, スイス1例, アイルランド1例, トルコ1例, アラブ首長国連邦1例, オーストラリア1例, シンガポール1例, ベトナム1例であった。

発症日の判明している2,792例の発症日別流行曲線を図2(a)に, 診断日の判明している4,109例の診断日別流行曲線を図2(b)に示す。発症日別流行曲線では, 症例数は3月中旬より増加し, 4月上旬が最も多く, 4月中旬以降は漸減傾向となっている。同様に, 診断日別流行曲線では, 症例数は3月下旬より増加し, 4月中旬が最も多く, その後は漸減傾向にある。

類型については, 「患者(確定例)」は3,790例(92.2%), 「無症状病原体保有者」は313例(7.6%)であった。「患者(確定例)」の届出時点で確認された症状は, 発熱3,425例, 咳2,097例, 咳以外の呼吸器症状549例, その他1,763例であった(重複あり)。なお, 届出に記載のある「重篤な肺炎」および「急性呼吸器症候群」はそれぞれ356例, 68例であった。

今回の記述対象とした4,109例のうち6月3日時点での死亡者の報告数は242例(5.9%)であった。

東京都におけるCOVID-19の発生動向の把握, 対策への反映等を目的として, 引き続き情報収集と分析, 情報の還元を実施する。

本調査は東京都の医療従事者, 保健所およびその他公衆衛生に従事されている皆様の協力の基に実施されました。この場を借りて深く御礼申し上げます。

 
 
東京都福祉保健局             
 渡邊愛可 野田良博 赤木孝暢 関 なおみ 杉下由行
 吉田道彦 矢内真理子     
東京都健康安全研究センター        
 岡田麻友 草深明子 中坪直樹 千葉隆司 貞升健志           
厚生労働省クラスター対策班東北大学    
 今村剛朗 押谷 仁           
同国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)     
 中下愛実 芹沢悠介           
同国立感染症研究所感染症疫学センター   
 松井珠乃

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