国立感染症研究所

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海外におけるCOVID-19の流行状況について(2021年1月12日時点)

(IASR Vol. 42 p29-30: 2021年2月号)

 

 前回, IASR2020年7月号1)で2020年6月4日時点での状況を報告したが, 本稿ではその後の世界保健機関(WHO)6地域における流行状況について報告する。

 現在(2021年1月12日時点), WHOの分類する6地域では, 計223の国と地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が確認されており2), 週報による1月5日時点の総症例報告数は83,326,479例, 総死亡者数は1,831,703例である3)

 WHOによる症例定義は4,5), 2020年12月16日更新版が最新である()。前回報告時1)と比較し, COVID-19の症状, 臨床所見, 画像所見に関する最新の知見が織り込まれ詳細なものとなったほか, 伝播の動態に関する知見が加えられた。

 6地域の概観に移る。まずわが国が所属する西太平洋地域(WPR)の症例報告数は1,112,724例, 総死亡者数は20,228例で, 2021年1月5日時点で世界の症例報告数の1%, 死亡者数の1%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, フィリピン(476,916例), 日本(240,954例), マレーシア(117,373例)であった。死亡者数は, フィリピン(9,253例), 中国(4,791例), 日本(3,548例)の順であった。

 南東アジア地域(SEAR)の症例報告数は, 12,051,014例, 総死亡者数は184,493例で, 1月5日時点で, 世界の症例報告数の14%, 死亡者数の10%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, インド(10,323,965例), インドネシア(758,473例), バングラデシュ(515,184例)であった。死亡者数も, インド(149,435例), インドネシア(22,555例), バングラデシュ(7,599例)の順であった。

 アメリカ地域(PAHO/AMR)の症例報告数は, 36,337,439例, 総死亡者数は872,486例で, 1月5日時点で, 世界の症例報告数の43%, 死亡者数の47%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, 米国(19,974,413例), ブラジル(7,700,578例), コロンビア(1,654,880例)であった。死亡者数は米国(345,253例), ブラジル(195,411例), メキシコ(126,507例)の順であった。

 ヨーロッパ地域(EUR)の症例報告数は26,885,471例, 総死亡者数は588,770例で, 1月5日時点で, 世界の症例報告数の32%, 総死亡者数の32%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, ロシア(3,236,787例), 英国(2,599,793例), フランス(2,599,127例)であった。死亡者数は, イタリア(74,985例), 英国(74,570例), フランス(64,543例)の順であった。

 東地中海地域(EMR)の症例報告数は4,977,852例, 総死亡者数122,061例で, 1月5日時点で, 世界の症例報告数の5%, 総死亡者数の6%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, イラン(1,237,474例), イラク(597,033例), パキスタン(484,362例)であった。死亡者数も, イラン(55,438例), イラク(12,829例), パキスタン(10,258例)の順であった。

 アフリカ地域(AFR)の症例報告数は1,961,234例, 総死亡者数43,592例で, 1月5日時点で, 世界の症例報告数の2%, 総死亡者数の2%がこの地域から報告されている。症例報告数が多かったのは, 南アフリカ共和国(1,088,889例), エチオピア(125,049例), アルジェリア(100,159例)で, 死亡者数は, 南アフリカ共和国(29,175例), アルジェリア(2,769例), エチオピア(1,944例)の順であった。

 2020年12月半ば, 英国からVOC-202012/01, 南アフリカ共和国から501Y.V2という2種類の異なる変異株が相次いで報告された。上記2カ国での感染者数・死亡者数の増加を引き起こす一方で, 上記以外の国々への伝播が確認され続けており, これらの変異株の感染性, 重症度, 再感染率, 抗体反応, ワクチン効果, 診断・治療に与える影響等への研究が進められている3,6)。またブラジル由来の変異株, B.1.1.248も日本で検出され報告された。

 またパンデミックの終息がみえない中, 現時点ではワクチンに大きな期待が寄せられている。WHOはCEPI(感染症流行対策イノベーション連合:厚生労働省が創設に関わり, 2017年より拠出を行っている), GAVI(ワクチンと予防接種のための世界同盟:最近はGAVIアライアンスとのみ称されることが多い)とともに, COVAX(ワクチンの確保と公正な分配を行う国際的な枠組み)を形成しており, 2020年12月28日時点で190の参加国に対して2021年末までの20億回分のワクチン提供を目標としている7)

 

参考文献
  1. 松澤幸正ら, IASR 41: 105-106, 2020
  2. WHO, Numbers at a glance,
    https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019(accessed 12 January 2021)
  3. WHO, Weekly epidemiological update-5 January 2021,
    https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update---5-january-2021(accessed on 5 January 2021)
  4. WHO COVID-19 Case Definition, Updated in Public health surveillance for COVID-19, published 16 December 2020,
    https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Surveillance_Case_Definition-2020.2(accessed 12 January 2021)
  5. WHO, Public health surveillance for COVID-19: interim guidance, 16 December 2020
    https://www.who.int/publications/i/item/who-2019-nCoV-surveillanceguidance-2020.8(accessed 12 January 2021)
  6. WHO, SARS-CoV-2 Variants, Disease Outbreak News, 31 December 2020(accessed 12 January 2021)
  7. WHO, COVAX Announces additional deals to access promising COVID-19 vaccine candidates; plans global rollout starting Q1 2021
    https://www.who.int/news/item/18-12-2020-covax-announces-additional-deals-to-access-promising-covid-19-vaccine-candidates-plans-global-rollout-starting-q1-2021 (accessed 28 December 2020)

 
国立感染症研究所感染症疫学センター
 里見真希 砂川富正

 

 

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