国立感染症研究所

水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化 ~感染症発生動向調査より・第3報~

国立感染症研究所
2017月9月1日現在
(掲載日:2017年10月20日)

水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus; VZV)の初感染で発症する。発熱と全身性の水疱性発疹(様々な段階の発疹が混在)が主症状であるが、多くの合併症が知られており、成人や妊婦、免疫不全患者等は重症化のリスクが高く、時に致命的となる疾患である。更に水痘罹患歴のある人は潜伏感染したVZVの再活性化により約10-30%が生涯に一度は帯状疱疹を発症する1,2)

水痘は2014年10月1日から定期接種対象疾患(A類疾病)となり、生後12—36か月に至るまでの児を対象に2回の定期接種が開始された(2014年度は経過措置で生後36—60か月に至るまでの児にも1回接種)。導入後まもなく、定期接種対象年齢を中心に水痘患者報告数の減少がみられた3)。今回引き続き定期接種化後の水痘発生動向を報告する(2017年9月1日暫定値)。

水痘小児科定点報告(2005年第1週~2017年第26週)

全国約3,000か所の小児科定点医療機関から患者数が毎週報告されている。定期接種化前2005-11年の定点あたり年間報告数は、中央値76.8(範囲67.1-88.1)で横ばいであった。2012年に日本小児科学会から水痘ワクチンの2回接種の推奨が出され報告数の減少が見られ始めていたが、定期接種化直後の2015年以降さらに大きく減少して2016年は20.7であった。また、報告患者に占める0歳、1-4歳の割合も2005-11年にはそれぞれ7-9%、68-70%でほぼ一定であったが、2016年は5%、39%、2017年第1~26週は4%、35%に減少した。

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水痘入院例全数報告(2014年9月19日(第38週)~2017年第26週)

水痘入院例全数報告は定期接種化に先立ち2014年9月19日から開始された。水痘で24時間以上入院したもの(他疾患で入院中に水痘を発症し、発症後24時間以上経過した例を含む)が対象である。

報告数・年齢分布:2014年第38~52週143人、2015年318人、2016年319人、2017年第1~26週159人、計939人が報告され、女性400人(43%)、年齢中央値28歳(範囲0-94歳)であった。年齢分布が変化しており、0-4歳の割合は2014年第38~52週34%、2015年14%、2016年14%、2017年第1~26週7%と減少した。一方、20-59歳の割合はそれぞれ36%、49%、55%、58%と増加した。

予防接種歴:1-19歳の入院例283人の水痘ワクチン接種歴は、1回67人(24%)、2回14人(5%)、あり回数不明7人(3%)、なし144人(51%)、不明51人(18%)で、接種歴なしまたは不明が約70%を占め、2回接種者の中には免疫不全例が4人含まれていた。成人は接種歴なし(26%)または不明(69%)が多かった。

合併症等:184人(20%)で合併症が報告され、そのうち4人が死亡例であった。年齢別の合併症の報告頻度は、0歳18%、1-2歳34%、3-4歳23%、5-9歳28%、10-19歳16%、20-59歳15%、60歳以上25%であった。合併症として、皮膚軟部組織感染症(膿痂疹46件、蜂窩織炎2件)、肺炎・気管支炎40件、肝炎38件、次いで神経合併症として、脳炎・髄膜脳炎23件、熱性痙攣20件、髄膜炎3件、小脳失調2件、急性散在性脳脊髄炎2件、根神経炎1件、難聴1件、顔面神経麻痺1件が報告された。さらに、播種性血管内凝固症候群(DIC)11件、敗血症10件、多臓器不全5件、急性腎不全3件、急性呼吸窮迫症候群1件、内臓播種性水痘5件など、より重篤な全身状態を呈した症例も見られた(複数症状の報告例あり)。また、妊婦の入院例が14人あった。

感染経路:入院例939人中48人(5%)は院内感染と報告された。

推定感染経路が記載された20-59歳168人のうち、最も多かったのは子ども(45人)であった。次いで、職場での感染(32人)、親・祖父母の帯状疱疹(26人)が多かった。職場での感染例は同僚の水痘、帯状疱疹のほか、職種として、介護・医療従事者(11人)、保育・教育関連(6人)、空港勤務(1人)、不特定多数の人と接触する職業(2人)の記載があった。また高齢者や免疫不全を有する症例の中には、再活性化による播種性帯状疱疹の可能性も否定できないとの記載が26人に見られた。

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その他: 83人(9%)が他疾患入院中の水痘発症と報告された。

 

定期接種化後、定期接種対象年齢であった1-4歳と、間接効果として0歳の報告数が減少した。2回接種による確実な予防が重要で、1-19歳の入院例の24%が1回接種例であった。感染症流行予測調査4)によると2016年度の1-19歳の健常者の水痘ワクチン接種率は1回25%、2回15%、あり回数不明4%、なし37%、不明20%と現在の接種率は低く、今後2回接種率の上昇が望まれる。また、入院例全数報告では定期接種開始後も成人例は継続的に報告されている。定期接種化により乳幼児の患者数は減少しているが、今後年長児・成人例の動向に注意が必要である。成人例の感染経路として、家族内、職場など身近な場所での水痘、および帯状疱疹患者からの感染が多く報告されており、重症化リスクの高い成人水痘の予防が小児と同様に必要である。特に不特定多数の人と接触する職場や介護・医療機関では水痘、帯状疱疹患者との接触機会が多いことが想定される。さらに、院内での感染、発症も多く、医療機関における平時からの感染対策と医療関係者の水痘ワクチンの2回接種5)、水痘患者発生時の速やかな空気感染対策が重要と考えられた。

感染症発生動向調査にご協力いただいている全国の保健所、地方感染症情報センター、医療機関の皆様に深謝申し上げます。

 
[参考文献]
  1. Gnann JW Jr., Whitley RJ. Clinical practice. Herpes zoster. N Engl J Med 2002; 347: 340-6.
  2. Oxman MN. Zoster vaccine: current status and future prospects. Clin Infect Dis 2010; 51: 197-213.
  3. 国立感染症研究所, 病原微生物検出情報 IASR. 37: 116-118; 2016. https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-iasrd/6331-436d05.html
  4. 国立感染症研究所, 感染症流行予測調査 予防接種状況. https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/667-yosoku-graph.html
  5. 日本環境感染学会. 医療関係者のためのワクチン接種ガイドライン第2版.  http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=106

 


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