国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年9月27日)

バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci: VRE)感染症は、感染症法が施行された1999年4月に四類感染症の全数把握対象疾患となり、2003年11月に五類感染症全数把握対象疾患に改正された。VRE感染症の届出上の定義は2013年3月に変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanAvanBvanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症」となった。なお、届出対象はVREを起因菌とする感染症を発症した患者であり、VREを保菌しているだけの者は届出の対象外である(届出基準、届出票についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。また、感染症法に基づく届出の基準として示されたVREの判定基準値は、病院で用いられている判定基準値と異なることがある(文末参考)。

2023年2月3日現在、2021年疫学週第1週~第52週(2021年1月4日~2022年1月2日)にVRE感染症と診断され、報告された症例は124例であった(図1)。2011年以降、年間の報告数は100例未満を推移していたが、2020年は136例と過去最多となり、2021年もそれに次いで多かった。性別では、男性が77例(62%)と(図2)、過去2年間の男性の割合(約50%)より増加した。診断時年齢の中央値は78歳(四分位範囲67-85歳、範囲0-95歳)で、0歳の症例が2例あった。70歳以上の症例数は86例(69%)であり、その割合は過去2年間の約80%と比較し減少した。届出時の死亡例は1例(1%)であった。診断名*は尿路感染症32例(26%)、菌血症21例(17%)の順に多く、これらの割合は過去2年間と比較して減少傾向であった。菌が分離された検体では尿38例(31%)、血液34例(27%)で、これらの割合も過去2年間と比較し減少傾向であった(表2)。菌種の記載があったのは122例で、Enterococcus faecium 111例(90%)、Enterococcus faecalis 4例(3%)、Enterococcus casseliflavus 2例(2%)、Enterococcus gallinarum 2例(2%)の順に多く報告されており、E. faeciumの割合は過去2年間と比較し増加していた(表3)。VREのバンコマイシン耐性遺伝子の種類については25例(20%)で記載があり、内訳はvanA遺伝子が 17例(68%)、vanB遺伝子が7例(28%)、vanA遺伝子とvanB遺伝子の両方が記載されていたものが1例(4%)だった。2021年におけるVRE感染症の報告は17都道府県よりあり、特に大阪府(25例)や広島県(21例)、静岡県(17例)からの症例の報告が多かった。報告があった都道府県数は、2014年から2019年は20前後であったが、2020年は26都道府県と増加し、発生地域の広がりが懸念されたが、2021年は17都道府県と2019年以前と同程度であった。また、報告医療機関数は、2017年から2019年は60施設前後であったが、2020年の102施設に増加し、2021年は86施設であった。

診断名は症状として報告された情報を用い集計した

 

VRE20230926 f01

 

VRE20230926 f02

 

VRE20230926 t01

 

VRE20230926 t02

 

VRE20230926 t03

 

VRE20230926 t04

 


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