国立感染症研究所

国立感染症研究所 感染症疫学センター
2018年10月27日現在
(掲載日:2019年5月23日)

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症は、感染症法が施行された1999年4月以降、四類感染症の全数把握対象疾患となり、2003年11月の改正以降、五類感染症全数把握対象疾患となった。届出上の定義は2013年3月に一度変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanAvanBvanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症である。」となり、耐性遺伝子の検出による届出基準が削除された。届出対象はVREによる感染症を発症した患者であり、保菌者は対象外である(届出基準、届出票についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。なお、届出票の「症状」については届出時点の臨床診断名であり、VREが検出された検体との一致を求めてはいない。また、感染症法上のVRE判定基準値は病院でしばしば用いられる基準と異なることがある(文末参考)。

2017年第1週(1月2日)~第52週(12月31日)の間に、83例のVRE感染症症例が報告された。性別は男性が44例(53%)、診断時年齢の中央値は78歳(四分位範囲69-85歳、範囲37~99歳)で、65歳以上が全体の83%を占めた(図1)。届出時の死亡例は3例(4%)であった。診断名は菌血症・敗血症22例(27%)、尿路感染症15例(18%)の順に多かった。分離検体は血液と尿がそれぞれ25%と最も多く、次いで皮膚・膿・創部・褥瘡・組織16%が多かった(表1)。菌種は、記載のあった78例のうちEnterococcus faecium 68例(87%)、Enterococcus faecalis 4例(5%)、Enterococcus casseliflavus 4例(5%)、Enterococcus gallinarum 1例(1%)の順に多く報告されており、Enterococcus属と報告されている症例が1例(1%)であった。VREの耐性遺伝子の検出については20例(24%)で記載があり、内訳はvanA遺伝子 8例(40%)、vanB遺伝子 10例(50%)、vanC遺伝子 2例(10%)であった。報告は16都道府県61医療機関から報告があり、大阪府(27例)や埼玉県(12例)で報告が多かった。

 


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