国立感染症研究所

掲載日:2021年2月22日

第23回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年2月11日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第23回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版はこちら

直近の感染状況等

新規感染者数は、報告日ベースでは、1月11日には、直近一週間では10万人あたり約36人に達したが、1月中旬以降減少傾向となっており、直近の1週間では10万人あたり約11人となっている。(発症日ベースでは、1月上旬以降減少傾向が継続)

実効再生産数:
全国的には、1月上旬以降1を下回っており、直近で0.76となっている(1月25日時点)。1都3県、大阪・兵庫・京都、愛知・岐阜、福岡では、1を下回る水準が継続(1月25日時点)。

入院者数は減少が続き、重症者数も減少傾向が明確化、死亡者数も減少の動き。60歳以上の新規感染者数の割合が高まっているため、重症者数の減少は時間を要することが考えられ、入院・療養調整中の事例は減少しているものの、対応を続けている保健所や医療機関の職員は引き続き疲弊し、業務への影響が懸念される。都市部を中心に多数の感染者数の発生が続く中、新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が続いており、救急対応への影響が見られる事例などが生じているほか、高齢者施設でのクラスター発生事例も継続。

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏
東京では、新規感染者数は減少が続き、宣言期間中のピークの1/3を下回っているが、なお約26人となっている。医療提供体制は非常に厳しい状況が継続。自治体での入院等の調整が厳しい状況も継続。神奈川、埼玉、千葉でも新規感染者数は減少が続き、それぞれ約14人、約18人、約19人となっている。いずれも医療提供体制は厳しい状況。
栃木では、新規感染者数の減少が続き、約6人まで減少。病床使用率は低下傾向。
②関西圏
大阪では、新規感染者数の減少が続き、約13人とステージⅢの指標となっている15人を下回っている。一方、医療提供体制や自治体での入院等の調整が厳しい状況も継続。また、高齢者施設等でのクラスターが継続的に発生し、重症者が高止まり。兵庫、京都でも新規感染者数は減少傾向であり、それぞれ約10人、約8人となっているが、医療提供体制は厳しい状況。新規感染者数の減少に伴う医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要。
③中京圏
愛知では、新規感染者数の減少が続き、約8人と15人を下回っている。岐阜でも新規感染者数の減少が継続し、約9人まで減少。いずれも、病床使用率は低下傾向であるが、医療提供体制は厳しい状況。新規感染者数の減少に伴う医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要がある。
④九州
福岡では、新規感染者数の減少が続き、約12人と15人を下回っているが、重症者数は増加傾向。医療提供体制は厳しい状況。新規感染者数の減少に伴う医療提供体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要。
⑤上記以外の地域
新規感染者数の減少傾向が続いている。沖縄でも、医療提供体制は、非常に厳しい状況が続いているが、新規感染者数は約17人まで減少。沖縄においては65才以上の割合が高く注意を要する。

変異株

英国、南アフリカ等で増加がみられる新規変異株は、世界各地に拡大しつつあり、国内でも、国内での感染によると考えられる、海外渡航歴のない者から変異株が発見される事例が、複数都道府県に感染者またがる広域事例も含め、生じている。従来株と比較して感染性が高い可能性があり、国内で持続的に感染した場合には、現状より急速に拡大するリスクがある。英国株については、変異による重篤度への影響も注視が必要。

感染状況の分析

1都3県、愛知・岐阜、大阪・兵庫・京都では実効再生産数が年始から低下傾向となり、緊急事態宣言下では0.8弱程度を維持し、新規感染者数の減少も継続しているが、人流の低下の鈍化もみられ留意が必要。クラスターの発生状況は、飲食店等に着目した今般の緊急事態宣言に伴う取組への協力もあり、飲食店は減少しているが、医療機関・福祉施設、家庭内などを中心として発生するとともに、飲食店でも引き続き発生している。全国的に20−50才台の感染者は減少しているが、80代以降では減少傾向が弱く、感染者数に占める60才以上の割合が上昇しており、重症者や死亡者の減少が遅れる可能性があり、動向に注意が必要。

年末年始にかけて、都市部から周辺地域へという形で感染が拡大したことも踏まえると、大都市における感染をしっかりと抑制し、再拡大を抑える対策を継続することが、地方での感染を抑えるためにも必須である。

※直近1週間の新規感染者数は、東京都だけで全国の1/4強を占め、1都3県で55%弱を占めている。また、緊急事態宣言下の10都府県で新規感染者数の8割弱を占めている。

必要な対策

今後、新規感染者の減少傾向を確かなものとし、重症者数、死亡者数を減少させることに加え、今後のワクチン接種に向けて医療機関の負荷を減少させ、リバウンドを防止し、変異株探知を的確に行えるようにするためにも、対策の徹底が必要。

11都府県に発出されていた緊急事態宣言は、2月2日に栃木県を除き、延長が決定された。新規感染者数が15人を下回り、病床使用率も低下傾向が見られる地域もあるが、医療提供体制や公衆衛生体制の負荷への影響について、引き続き注視する必要がある。一方、多数の入院者数、重症者数が引き続き発生する状況も想定し、引き続き必要な医療提供体制の確保が必要。

緊急事態宣言が解除された地域でも、再増加につながらないよう、引き続き感染者数を減少させる取組が必要。そのためには感染リスクに応じた積極的検査や積極的疫学調査を再度強化できる体制が求められる。また、感染拡大の核となる場や影響の変化を評価・分析し、新たに対応が必要となる取組も検討すべき。

「高齢者を守る」。クラスターの発生が継続している福祉施設および医療機関における感染拡大を阻止する取組が必要である。さらに、施設従事者も守るための取組が必要である。施設等の職員に対する定期的な検査の実施、自治体の高齢者福祉部門と感染症対策部門が連携して、施設への専門家派遣等による感染症対策の支援が求められる。さらに、高齢者施設で1例でも感染者が確認された場合には、地域の医療資源を活用して、施設への医療支援を迅速に行うこと。

変異株

変異株国内流入の監視のため、リスク評価に基づく検疫体制の強化が必要である。また、国内の変異株スクリーニング検査体制の強化により、変異株感染者の早期検知、積極的疫学調査と速やかな拡大防止策の実施や広域事例への支援等が求められる。個人の基本的な感染予防策は、従来と同様に、3密の回避、マスクの着用、手洗いなどが推奨される。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version