国立感染症研究所

掲載日:2021年3月18日

第27回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年3月17日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第27回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、1月中旬以降(発症日ベースでは、1月上旬以降)減少が継続していたが、3月上旬以降横ばいから微増が続き、直近の1週間では10万人あたり約6人となっており、リバウンドを起こさず、改めて減少傾向としていくことが必要。

実効再生産数:
全国的には、1月上旬以降1を下回っていたが、直近では、1.04となっている(2月28日時点)。1都3県、愛知・岐阜では1を下回っているが、大阪・兵庫・京都、福岡では1を上回る水準となっている。(2月28日時点)

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏(1都3県)
東京、神奈川、埼玉、千葉の新規感染者数はそれぞれ、約15人、約8人、約11人、約12人とステージⅢの指標となっている15人を下回っているが、他地域と比べても高い水準で、東京と埼玉では増加の動きが見られる。一方で医療提供体制は、これまでの新規感染者数、療養者数の減少に伴い、自治体での入院等の調整も改善が続き、病床使用率もステージⅣの指標を継続的に下回るなど負荷の軽減が見られる。
②関西圏・中京圏・九州(6府県)
緊急事態宣言の解除から2週間が経過。いずれも、これまでの新規感染者数、療養者数の減少に伴い医療提供体制への負荷の軽減が見られる。新規感染者数は、大阪、兵庫を除き各府県とも5人を下回る水準となっている。大阪、兵庫、京都、福岡では、3月上旬以降横ばいから微増となっている。緊急事態措置の解除と前後して、夜間の人流が増加しており、愛知、大阪、京都では若年層の感染の水準が高くなっている。また、関西では変異株の報告が増加している。
③上記以外の地域
一部の地域でクラスターが発生するなど再上昇の動きもあり注意が必要。特に、宮城、沖縄では、新規感染者数はそれぞれ、約14人、約13人と増加が続いている。

変異株

英国、南アフリカ等で確認されその影響が懸念されるN501Yの変異のある変異株(VOC)は、現状より急速に拡大するリスクが高い。変異株に対して自治体による積極的疫学調査が行われる中で、変異株の感染者とクラスター報告数の増加傾向が見られる。

感染状況の分析

緊急事態措置区域の1都3県では、市民や事業者の長期間にわたる協力により新規感染者の減少が続いていたが、3月上旬以降、他地域と比べても高い水準で横ばいから微増。首都圏では、感染者数が多く、匿名性も高いため、感染源やクラスターの発生場所の多様化がみられ、不明な例も多い。年齢別に見ると、若年層の割合が高くなっており、人流の再上昇の動きも見られている。近畿圏含め、都市部では、既にリバウンドが生じ始めているのではないかとの指摘もある。

宮城、沖縄では、20代、30代を中心とした感染拡大が見られているため、今後の推移に留意が必要。

クラスターは、医療機関と高齢者施設での発生が継続し、地域により飲食店でも引き続き発生している。また、カラオケに関連するクラスターも発生。

変異株の感染が継続している中で、感染を再拡大させないための取組が必要。今後流行するウイルスは変異株に置き換わっていく可能性もあり、さらなる流行拡大につながるおそれに留意が必要。

必要な対策

感染のリバウンドの兆候をできる限り迅速に検知する方法を早急に構築し、対策につなげることにより新規感染者数の増加を抑え、医療提供体制を維持し、ワクチンを安定して接種できる体制の確保、また、変異株拡大等のリスクを低減させるための体制の確保が重要。

そうした中で、緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することへの懸念に留意が必要である。特に、首都圏では、感染者数が多く、感染が継続した場合の他地域への影響も大きい。感染の再拡大を防ぐためには、新たな感染者をできるだけ低い水準で長く維持することが必要である。そのため、地域の感染状況等に応じ、積極的疫学調査(感染源が不明であっても、リスク行動の有無にも着目することも重要)に基づく情報・評価を踏まえた対応など、さらに感染を減少させるために必要な取組を行っていくことが必要。既に緊急事態措置が解除された地域も同様の取組が必要。

感染を減少させるための取組に協力が必要なことについて、国、自治体が一致したメッセージを出していくことが必要。

会食における感染リスクを低減させるために、事業者の取組とともに、利用者の会食のあり方を周知することが重要。

また、年度末から年度初めの恒例行事(卒業式、歓送迎会、お花見)などに伴う宴会・旅行はなるべく避けていただくように、改めて、効果的なメッセージの発信が必要。また、年度初めに関しては、入社や入学の際に、人の移動・研修を伴うことが多いため、感染拡大につながらないよう留意が必要。併せて、カラオケに関係するクラスターが発生しており、改めてガイドラインの遵守の徹底に向けた働きかけが必要。

今後、再拡大の防止とともに次の波に備えた対応を行うことが重要。具体的には、①ワクチン接種の着実な推進、②変異株対策の強化、③感染リスクに応じた積極的な検査による早期探知や積極的疫学調査の再強化、飲食店及び高齢者施設対策の継続、感染拡大の兆しが見られた場合の機動的対応などの感染拡大防止策の推進、④新型コロナに対する医療を機動的に提供するための医療提供体制等の充実を確実に実施すること(引き続き必要な病床を確保するとともに、医療機関の役割分担の徹底や後方支援医療機関、退院患者を受け入れる施設等の確保等により実効的に病床を確保・活用し、一連の対応が目詰まり無く行われる体制の確保)などの取組が必要。

変異株

N501Yに変異のある変異株については、その影響がより大きくなってくることを踏まえ、その影響を抑えるための対応が必要。このため、先日示された変異株対策パッケージも踏まえ、①水際措置の強化の継続、②国内の変異株のサーベイランス体制の早急な強化(民間検査機関や大学等とも連携。国は自治体の検査数等を定期的に把握)、③変異株感染者の早期検知、積極的疫学調査による濃厚接触者および感染源の特定や速やかな拡大防止策、④変異株の感染性や病原性等の疫学情報についての評価・分析(N501Y変異以外のE484Kなどの変異を有する変異株についても実態把握を継続)と正確な情報の発信、⑤検体や臨床情報等の一体的収集・解析等の研究開発等の推進が必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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